研究課題
今年度の主な成果として以下の研究成果がある。① 青木Gは、UCoGeの単結晶の輸送現象(電気抵抗、熱伝導度)と磁化を極低温・強磁場の極限環境下で精密に測定し、強磁性の磁気モーメントと平行(c軸)方向に磁場を加えたときは超伝導電子対が弱められ、垂直(b軸)報告に磁場を加えたときは逆に強められることを示した。この結果はNMR実験結果とコンシステントな結果である。② UCoGeではa軸方向に磁場を加えた場合、超伝導は単調に減少していくだけであるがb軸に印加した時は超伝導は増大する。石田Gでは印加磁場に対して超伝導のレスポンスが大きく異なるのはスピン磁化率の異方性に関係することを、各軸方向のナイトシフトの精密測定から指摘した。③ UCoGeは加圧により強磁性秩序は消失し超伝導のみを示すようになる。強磁性秩序が消えた圧力領域の磁気状態と超伝導状態を核四重極共鳴より調べた。強磁性秩序が消えたP = 0.67 GPaでは超伝導直上での強磁性ゆらぎが強まり、超伝導転移温度も上昇している。また超伝導転移以下の超伝導相では1/T1は急激に減少しているが、強磁性と共存している超伝導状態の時に見られていた非超伝導成分の1/T1は見られなかった。この結果は、(1)バルク超伝導は強磁性秩序が消えたのちも生き残ること、(2)イジング強磁性ゆらぎが超伝導の引力であるというシナリオをより確かにする実験結果であること、(3) 強磁性秩序と共存する超伝導で見られた非超伝導の1/T1の成分は強磁性相の存在と関係した成分であり、「自己誘導渦糸状態」の存在を支持する結果であること、を示唆する。さらにこの強磁性を抑えた圧力下の常磁性超伝導相で59Co核のナイトシフト測定から超伝導状態のスピン磁化率を測定したところ、超伝導状態でもスピン磁化率はほとんど変化せず、スピン三重項超伝導を示唆する結果が得られた。
1: 当初の計画以上に進展している
ウラン化合物の新奇な超伝導状態の理解、特に強磁性超伝導体の超伝導状態や超伝導発現機構の解明のため、核磁気共鳴(NMR)、核四重極共鳴(NQR)実験より微視的な観点から調べている。現在までの3年間で下記の研究成果を挙げてきている。①強磁性超伝導体UCoGeにおける強磁性ゆらぎによるスピン三重項超伝導状態の確証。強磁性モーメント方向のc軸方向の強磁性ゆらぎと超伝導と関係を調べた。c軸方向に磁場を印加し強磁性ゆらぎを抑えると超伝導も抑制され、b軸方向に磁場を印加し強磁性転移を抑えることで強磁性ゆらぎが強まると超伝導臨界磁場が高まることを明らかにした。このように強磁性ゆらぎは超伝導に密接に関係していることを実験から明らかにした。また超伝導状態でのスピン磁化率の測定からスピン三重項を示唆する結果は得られている。②強磁性超伝導URhGeにおける強磁性臨界ゆらぎにより強められる超伝導。URhGeで磁場をb軸に印加した時に見られるリエントラント超伝導の磁場領域で磁気励起をNMRより調べ、リエントラント超伝導が見られる磁場領域において印加磁場方向の磁気励起を検出する核スピン-スピン緩和率1/T2に発散的な振舞いが見られることを明らかにした。URhGeのリエントラント超伝導に対してはb軸方向の磁気ゆらぎが重要であることを示した。③圧力誘起超伝導の強磁性体UGe2におけるイジング強磁性ゆらぎの検出、④隠れた秩序状態と共存するURu2Si2の超伝導対関数の同定、⑤ThをドープしたUBe13における超伝導2段転移の観測、⑥トポロジカル超伝導の観点からのウラン系超伝導、⑦第一原理計算、および多極子超伝導の観点から見たウラン系超伝導体ただし、⑥、⑦の理論成果は研究申請時には予想していなかった結果であるので、当初予想していた以上の研究成果を挙げられている。
①強磁性超伝導体UGe2における強磁性ゆらぎと超伝導。最近、藤Gにより常圧のUGe2においても強磁性モーメント方向に異方的な強磁性ゆらぎが存在することが明らかとなった。加圧下のNMRの実験より、この強磁性ゆらぎと超伝導の関係を明らかにする。②強磁性超伝導体UCoGeにおける超伝導状態のスピン磁化率の測定。現在、加圧下で強磁性を抑制したもとナイトシフト測定による超伝導状態のスピン磁化率の測定を行っている。この測定を推し進め、広い圧力領域で実験を行う。本測定では試料の角度合わせが重要かつ大変であるが、可能な限り試料の各軸方向に磁場をそろえることの出来るように装置の工夫するをする。③UBe13、(UTh)Be13の超伝導状態の解明。UBe13については超伝導状態においていろいろな物理量に異常が現れ、スピン三重項超伝導体であることが指摘されているが、現在までのところその異常の起源と超伝導対パリティについて確定していない。広い磁場下でのナイトシフトと1/T1の測定を行い、超伝導対状態やギャップ関数を同定する。④結晶対称性に保護された超伝導ギャップノードの解明。本研究課題におけるこれまでの理論研究により、従来の理論では存在が分からなかった超伝導ギャップ構造が明らかにされた。その一例は非共型空間群に守られたラインノードであり、他の例はブロッホ状態の角運動量に依存するポイントノードである。これらは超伝導対称性とギャップ構造の新しい関係を示すものであり、UBe13, UCoGe, UPt3が候補物質として挙げられる。今後2年間の研究でこれらの超伝導体の微視的機構と共に明らかにして行く予定である。⑤ウラン系以外での強磁性超伝導体の発見 今までのところ、強磁性超伝導体はウラン化合物に限られていた。イジング型の異方性をもつd電子系の強磁性で超伝導が見られないか超伝導探索を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (53件) (うち国際共著 22件、 査読あり 53件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (128件) (うち国際学会 40件、 招待講演 24件) 備考 (5件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Physical Review B
巻: 97 ページ: 075130 1-7
DOI: 10.1103/PhysRevB.97.075130
Physica B: Condensed Matter
巻: 536 ページ: 122~124
10.1016/j.physb.2017.09.022
巻: 536 ページ: 532~534
10.1016/j.physb.2017.10.050
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 87 ページ: 023701~023701
10.7566/JPSJ.87.023701
Physical Review Letters
巻: 120 ページ: 037001
10.1103/PhysRevLett.120.037001
巻: 87 ページ: 033704~033704
10.7566/JPSJ.87.033704
巻: 87 ページ: 041008~041008
10.7566/JPSJ.87.041008
巻: 536 ページ: 810~812
10.1016/j.physb.2017.10.015
巻: 87 ページ: 013701~013701
https://doi.org/10.7566/JPSJ.87.013701
巻: 87 ページ: 013704~013704
https://doi.org/10.7566/JPSJ.87.013704
巻: 120 ページ: 027001
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.120.027001
Physical Review X
巻: 8 ページ: 011014 1-11
https://doi.org/10.1103/PhysRevX.8.011014
巻: 97 ページ: 081107(R)-1-5
10.1103/PhysRevB.97.081107
巻: 96 ページ: 134506-1-9
DOI: 10.1103/PhysRevB.96.134506
巻: 96 ページ: 060507 (R) 1-5
DOI: 10.1103/PhysRevB.96.060507
巻: 86 ページ: 073701~073701
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.073701
巻: 96 ページ: 184524
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.96.184524
巻: 96 ページ: 100505
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.96.100505
巻: 86 ページ: 084702~084702
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.084702
J. Electronic Materials,
巻: 46 ページ: 3572-3584
https://link.springer.com/article/10.1007/s11664-016-5265-z
巻: 95 ページ: 224425
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.224425
巻: 95 ページ: 235147
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.235147
Science Advances
巻: 3 ページ: e1602055
DOI: 10.1126/sciadv.1602055
巻: 95 ページ: 161107
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.161107
巻: 95 ページ: 155138
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.155138
巻: 95 ページ: 115151
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.115151
Physica B
巻: 506 ページ: 19~22
https://doi.org/10.1016/j.physb.2016.10.034
巻: 86 ページ: 024712~024712
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.024712
J. Alloys. Comp
巻: 694 ページ: 439~451
https://doi.org/10.1016/j.jallcom.2016.09.287
巻: 95 ページ: 014411
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.014411
巻: - ページ: 印刷中
https://doi.org/10.1016/j.physb.2017.10.115
https://doi.org/10.1016/j.physb.2017.10.105
https://doi.org/10.1016/j.physb.2017.10.023
https://doi.org/10.1016/j.physb.2017.07.063
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 29 ページ: 234002~234002
DOI: 10.1088/1361-648X/aa6e7d
Nature Communications
巻: 8 ページ: 15358~15358
DOI: 10.1038/ncomms15358
Journal of Physics: Conference Series
巻: 807 ページ: 032006~032006
doi:10.1088/1742-6596/807/3/032006
巻: 807 ページ: 052015~052015
doi:10.1088/1742-6596/807/5/052015
巻: 807 ページ: 012014~012014
doi:10.1088/1742-6596/807/1/012014
巻: 807 ページ: 062002~062002
doi:10.1088/1742-6596/807/6/062002
巻: 807 ページ: 012005~012005
doi:10.1088/1742-6596/807/1/012005
巻: 95 ページ: 195121-1-8
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.195121
巻: 868 ページ: 012003~012003
doi:10.1088/1742-6596/868/1/012003
巻: 807 ページ: 032001~032001
doi:10.1088/1742-6596/807/3/032001
巻: 86 ページ: 113702~113702
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.113702
巻: 96 ページ: 024513 1-6
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.96.024513
巻: 118 ページ: 147001-1-6
10.1103/PhysRevLett.118.147001
巻: 95 ページ: 134507-1-11
10.1103/PhysRevB.95.134507
巻: 95 ページ: 134508-1-8
10.1103/PhysRevB.95.134508
巻: 119 ページ: 027001-1-6
10.1103/PhysRevLett.119.027001
巻: 95 ページ: 224514-1-19
10.1103/PhysRevB.95.224514
巻: 96 ページ: 054501-1-11
10.1103/PhysRevB.96.054501
巻: 96 ページ: 064432-1-18
10.1103/PhysRevB.96.064432
http://www.imr.tohoku.ac.jp/ja/news/results/detail---id-874.html
http://www.imr.tohoku.ac.jp/ja/news/results/detail---id-632.html
http://www.imr.tohoku.ac.jp/ja/news/results/detail---id-370.html
http://www.imr.tohoku.ac.jp/ja/news/results/detail---id-643.html
http://www.imr.tohoku.ac.jp/ja/news/results/detail---id-654.html