研究課題/領域番号 |
15H05745
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石田 憲二 京都大学, 理学研究科, 教授 (90243196)
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研究分担者 |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
藤 秀樹 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60295467)
徳永 陽 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (00354902)
池田 浩章 立命館大学, 理工学部, 教授 (90311737)
柳瀬 陽一 京都大学, 理学研究科, 教授 (70332575)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | 低温物性 / 強相関電子系 / 超伝導材料・素子 / 金属物性 / 物性実験 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の研究を行った。 ① 青木Gは、UCoGeの単結晶の輸送現象(電気抵抗、熱伝導度)と磁化を極低温・強磁場の極限環境下で精密に測定し、強磁性の磁気モーメントと平行(c軸)方向 に磁場を加えたときは超伝導電子対が弱められ、垂直(b軸)報告に磁場を加えたときは逆に強められることを示した。この結果はNMR実験結果とコンシステントな結果であり、この研究内容を論文で発表した。② 青木GはURhGeに一軸圧を加えることにより、リエントラント超伝導の転移磁場が変化するものの、強磁性の臨界磁場のところでやはり超伝導転移温度が高くなっていることが実験から示された。この結果は、一軸圧により強磁性秩序が弱まり強磁性臨界磁場が変化すると超伝導も同じように変化していることを示しており、強磁性ゆらぎが超伝導の引力になっていることを示す更なる重要な結果である。 ② UCoGeではa軸方向に磁場を加えた場合、超伝導は単調に減少していくだけであるがb軸に印加した時は超伝が増大する。石田Gでは印加磁場に対して超伝導のレスポンスが大きく異なるのは強磁性ゆらぎの異方性に起因することを、各軸方向の1/T1と1/T2測定から指摘した。③ UCoGeは加圧により強磁性秩序は消失し超伝導のみを示すようになる。強磁性秩序が消えた圧力領域の磁気状態と超伝導状態を核四重極共鳴より調べ、強磁性秩序が消えたP = 0.7 GPaでは超伝導直上での強磁性ゆらぎが強まり超伝導転移温度も上昇していること、高圧のP=1.5GPaでは強磁性ゆらぎが弱まり超伝導転移温度も下がっていることから強磁性ゆらぎと超伝導の関係を指摘した。④ この強磁性を抑えた圧力下の常磁性超伝導相で59Co核のナイトシフト測定から超伝導状態のスピン磁化率を測定したところ、超伝導状態でもスピン磁化率はほとんど変化せず、スピン三重項超伝導を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウラン化合物の新奇な超伝導状態の理解、特に強磁性超伝導体の超伝導状態や超伝導発現機構の解明のため、核磁気共鳴(NMR)、核四重極共鳴(NQR)実験より微視的な観点から調べている。現在までに下記の研究成果を挙げてきている。 ①強磁性超伝導体UCoGeにおける強磁性ゆらぎによるスピン三重項超伝導状態の確証。磁場角度分解NMR実験から強磁性ゆらぎと超伝導の相関を実験から明らかにした。また超伝導状態でのスピン磁化率の測定からスピン三重項を示唆する結果は得られている。②強磁性超伝導URhGeにおける強磁性臨界ゆらぎにより強められる超伝導。URhGeで磁場をb軸に印加した時に見られるリエントラント超伝導の磁場領域で磁気励起をNMRより調べ、リエントラント超伝導が見られる磁場領域において印加磁場方向の磁気励起を検出する核スピン-スピン緩和率1/T2に発散的な振舞いが見られることを明らかにした。URhGeのリエントラント超伝導に対してはb軸方向の磁気ゆらぎが重要であることを示した。また、一軸圧で強磁性臨界点とリエントラント超伝導の関係を調べ、この実験からも強磁性臨界ゆらぎと超伝導の相関を示した。③圧力誘起超伝導の強磁性体UGe2におけるイジング強磁性ゆらぎの検出、④隠れた秩序状態と共存するURu2Si2の超伝導対関数の同定、⑤ThをドープしたUBe13の単結晶育成と報告のあった超伝導二段転移の再現、⑥トポロジカル超伝導の観点からのウラン系超伝導、⑦第一原理計算、および多極子超伝導の観点から見たウラン系超伝導体、⑧新超伝導体UTe2の研究。 ただし、⑥、⑦の理論成果、⑧のUTe2の研究は研究申請時には予想していなかった結果であるので、当初予想していた以上の研究成果を挙げられている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年アメリカのグループにより発見されたUTe2の物性を良質な単結晶試料を用いた詳細なNMR実験から解明する。UTe2は常伝導状態の磁性的振舞いから強磁性転移に近い物質と考えられ我々が研究してきていた強磁性超伝導との関連に興味が集まっており、また超伝導の常磁性状態で起こっているために超伝導状態の性質も調べやすい。超伝導上部臨界磁場の振舞いからスピン三重項超伝導と考えられており、その確証を得るような実験を目指す。そのため、最終年度はUTe2の研究に重きを置く。 UTe2やUCoGeの実験においては、低温で磁場角度の制御が大切であることがわかってきた。最終年度であるが、精密な角度回転機構を持っている希釈冷凍機を購入し、今後の実験に活かす。
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