研究課題
研究申請時の計画と変更はなく、炭素質隕石中に含まれる微量有機化合物を超高感度・超高分離・超高質量分解能・空間分布で研究する技術の開発を行った。初年度に設置したクリーンルームが梅雨時に結露して、工事をやり直すトラブルがあったものの分析時のバックグラウンドの低減化をひとまず終了し、地球外有機化合物の分析を開始した。隕石抽出物に含まれる微量有機化合物をエレクトロスプレーイオン化で検討し、数十フェムトモルの化合物をポジティブイオンとして検出でき、600種以上のCHNからなる新たな化合物を同定した。これらは一連のアルキル同族体として存在することがわかり、超高分解質量分析が非常に有力な分析手段であることを確認した。ネガティブイオンも検討したが、質量精度がポジティブイオンより低く、開発段階にとどまっている。アミノ酸分析についても数十マイクログラムの隕石試料で光学活性体(DL体)の分離が可能であることがわかった。アミノ酸分析において今までに報告例のない10種を発見し、隕石有機化合物の新たな生成過程を提案した。脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)による隕石表面上の有機化合物のその場分析の検討も開始し、加熱レーザーなどを用いなくても化合物が十分イオン化され、検出が可能であることがわかった。予備的な研究により、DESIによる化合物分布の可視化(イメージング)も可能で、異種の化合物が異なった場所に存在することが示唆された。これらの研究成果を国内外の学会で発表するとともに論文として発表した。
2: おおむね順調に進展している
夏期に天井から結露した水滴がしたたるなどのトラブルがあり、工事のため1ヶ月実験ができなかったが、確実に予定していた計画が遂行できているため。
研究申請時の計画と変更はなく、隕石などの惑星物質中に含まれる微量有機化合物を超高感度・超高分離・超高質量分解能・空間分布で研究する技術の開発を引き続き行う。高感度化・高分解能化に伴って、多くの未知の化合物が検出されるので、その構造解析が宇宙での化学進化を明らかにする上で必要となる。いかに微量の未知化合物を同定するかが問題であるが、今までの研究成果から化合物生成モデルも提案できたので、シミュレーション実験も合わせて同定を行いたい。また、その場分析によって、隕石中の有機化合物分布の不均一性が明らかになりつつあるので、鉱物との関わりについても実験および電子顕微鏡を用いる観察的手法も合わせて進めていきたい。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 636(8pp)
10.1038/s41598-017-00693-9
Origin of Life and Evolution of the Biosphere
巻: 47 ページ: 83-92
10.1007/s11084-016-9500-7
http://www.planetaryorganics.jp/kaken.html