研究課題/領域番号 |
15H05751
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 和夫 大阪大学, 先導的学際研究機構, 特任教授(常勤) (70171741)
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研究分担者 |
長友 英夫 大阪大学, レーザー科学研究所, 准教授 (10283813)
坂上 仁志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (30254452)
羽原 英明 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60397734)
城崎 知至 広島大学, 工学研究科, 准教授 (10397680)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | Super Penetration / 爆縮プラズマ / 高強度レーザー / プラズマ加熱 |
研究実績の概要 |
昨年度大阪大学レーザー科学研究所にて実施した、大型レーザー装置を用いた大規模爆縮球対称プラズマにおけるSPの実証実験では、爆縮プラズマに直接高強度レーザーを照射してSPにおける加熱の有効性の検証を行った。高強度レーザーの照射タイミングを変化させることで、爆縮されたプラズマの大きさに依存したX線の発光領域の増減が見られた。特に最大爆縮時では形成されたと考えられるコア領域の大きさに等しい発光が見られ、本手法にて実際に高速電子がプラズマを加熱している様子を初めて計測することに成功していた。本年度はその成果の詳細な評価を行った。その結果、X線発光量から見積もられる高強度レーザーのエネルギー付与率は1%程度であることがわかり、その付与率の原因として、1.プラズマ面密度が想定より1/5程度(核融合反応点火用プラズマの1/100)、2.加熱媒体である高速電子の発散角が、想定されていた値(<30度)よりもかなり大きい、という2つが原因であることが明らかとなった。そこで、高速電子の発散角を抑制するため、高速電子の自己生成磁場によって自ら電子ビームを収束させることを考案し、爆縮プラズマ中に金属ワイヤを挿入し、プラズマとワイヤ間の導電率ギャップによって生成する磁場を利用することを試みた。実験は再び大阪大学レーザー科学研究所で実施し、ワイヤが挿入されたターゲットの場合、X線発光量が50%程度増強され、本手法が電子ビームの収束に有用であることを示した。 同時に昨年度までに完成させた大型粒子シミュレーションコードを用いた解析を行い、高強度レーザーが安定にプラズマ中を伝搬する理由として、プラズマチャンネル中に生成する電流が磁場を形成し、その磁場がプラズマを押しのけることでプラズマチャンネルを安定に形成してレーザーを安定に伝搬させることを明らかにし、本手法の頑健性を示すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来では、爆縮プラズマに高強度レーザーを直接照射する場合、レーザープラズマ不安定性によりレーザーが散逸し、殆ど燃料コアへのエネルギー付与が期待できないと思われていたが、本研究の成果によりプラズマチャンネル中の強い磁場により安定にコア近傍まで伝搬することが示され、本手法の有用性を示すことができた。付与率の絶対値に関しては現状では他の手法と比べさほど大きいとは言えないが、本年度の研究成果によりその原因を明らかにすることができ、それを向上させる手法として金属ワイヤ挿入による自己生成磁場による発散角抑制を提案し、実際の実験においてその手法が有用であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー付与率の向上を目指した研究を行う。本年度行った金属ワイヤの挿入に関し、金属ワイヤの材質、長さ、太さといった形状パラメータを最適化することで、より多くのエネルギーを爆縮コアまで輸送することを試みる。実際の実験の前に様々なシミュレーションを行い、爆縮時のワイヤの状態の検証、エネルギー輸送、生成する磁場の強さ、などの詳細を見積もる。同時にプラズマの面密度を大きくするため、爆縮プラズマを形成するレーザーのパルス波形を変更することを試み、数倍程度に面密度を向上させる。エネルギー付与の面密度に対するスケーリングを明らかにすることで、点火級の爆縮プラズマに対する本手法の有用性を示していく。
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