研究課題
分子の電子状態理論(量子化学)は偉大な成功を納め、各領域で応用されるに至っている。その基礎となっている概念は、「電子が原子核の運動に無限のスピードで追随することができて、そのために、電子波動関数はほとんど常に定常状態(時間無依存状態)をとっていると考えてよい」とするボルン・オッペンハイマー(BO)近似(1927)である。しかし、主にレーザー技術の発達により、実験研究の最先端では、分子内の電子の動力学までもが追跡できる時代に入っており、新しい理論化学の基礎的枠組みが必要となっている。本研究では、定常電子状態理論では扱うことができない非断熱電子動力学現象を対象とする。概念としての「超BO化学」を「BO近似からかけ離れているために、新しい現象や法則が出現する化学領域」と定義し、新しい化学概念を発展させる。主たる具体的課題として、(1)光合成の初期過程における水の分解、電荷分離とそれに引き続く電子伝達動力学とプロトンリレー、(2)超高擬縮重電子状態が原子核運動とカップルして激しく大きく揺らぐ電子状態の化学反応と、それが提供する反応場の解明と設計、(3)生体膜を通過して一方向に輸送されるプロトンポンプの動的電子機構の解明、タンパク質の中のプロトン・電子同時動力学の量子論的動作原理などの解明、(4)イオン化過程非断熱電子動力学などのアト秒レーザーによる計測と、その応用に関わる理論の展開、などを行ってきた。さらに、相対論的非断熱電子動力学や非断熱電子動力学領域における化学結合論・化学反応論を発展させている。このようにして、新たな研究領域として「非断熱電子化学」あるいは「時間領域量子化学」(Time-domain quantum chemistryと称する)を発展さた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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