研究課題/領域番号 |
15H05760
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸山 茂夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90209700)
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研究分担者 |
松尾 豊 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任教授 (00334243)
大宮司 啓文 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (10302754)
千足 昇平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (50434022)
項 栄 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20740096)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | エネルギーデバイス / ナノカーボン材料 / カーボンナノチューブ / グラフェン / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブやグラフェン,フラーレンなどナノカーボン材料の構造制御およびそれらのエネルギーデバイスへの応用を行った.ナノカーボン材料はその構造によって物性が大きく変化するため,その応用には構造制御によって求められる物性を実現することが重要となる.単層カーボンナノチューブは特殊なCo-W合金微粒子を触媒としたカイラリティ制御CVD合成を行った.化学的に合成したCo-W触媒やスパッタリング法によるC-W合金などを用い,合成条件とその時に得られる単層カーボンナノチューブのカイラリティとの相関をラマン散乱分光法や透過型電子顕微鏡などを用いて詳細な分析を行った.グラフェンについては,CVD合成における大面積化の条件を吟味し,サイズだけでなく成長速度や品質と合成条件との関係を明らかにした. エネルギーデバイス応用については,単層カーボンナノチューブ薄膜とシリコンとで作製したヘテロ接合型太陽電池を作製した.単層カーボンナノチューブ薄膜へドーピングによる太陽電池性能への影響を分析・評価した.また単層カーボンナノチューブを電極とするペロブスカイト太陽電池を作製し,高い変換効率の実現にも成功した. さらに,単層カーボンナノチューブ薄膜を透明電極とする有機薄膜太陽電池の作製法を確立した.酸化モリブデンによるカーボンナノチューブの電子の引き抜きが鍵であり,硝酸による電子の引き抜きを用いた従来法と比べ,エネルギー変換効率が格段に向上した.また,リチウムイオン内包フラーレンについて,ジフェニルメタノ付加体などの誘導体を合成し,その高い電子親和性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単層カーボンナノチューブ薄膜を用いた有機薄膜太陽電池に関しては,カーボンナノチューブ薄膜の上に有機半導体薄膜を積層する目的に合致した最適なホールドープ法を見いだし,従来のエネルギー変換効率が2%程度だったところ6%以上にまで高め,3倍のエネルギー変換効率を得ることに成功した(J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 7982.).得られた研究成果について東京大学からプレスリリースを行い(http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2015/30.html),日経産業新聞(2015年6月19日)および日刊工業新聞(2015年6月22日)に取りあげられた.また,カーボンナノチューブ薄膜を透明電極とするペロブスカイト太陽電池を作製し,世界に先駆けて報告した(Nano Lett. 2015, 15, 6665.).世界で初めてとなった本論文では,疎水性を上げたPEDOT:PSSを用いて疎水性のカーボンナノチューブ薄膜と親水性の有機金属ペロブスカイト層を接合する方法を示し,道を拓いた.よって,当初の研究計画以上の高い研究成果が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
ナノカーボン材料の作製技術の向上を進めていく.単層カーボンナノチューブでは合金触媒からの合成だけでなく,クローニング合成法等カイラリティ制御合成実現の可能性のある様々な手法を試みていく.グラフェンについては,成長条件と品質との関連を重点的に分析し,高品質大面積化の指針を検討していく.太陽電池においては,高性能アペロブスカイトの作製法を検討すると同時に,単層カーボンナノチューブやグラフェンの応用技術の探索を進める. 有機薄膜太陽電池の金属裏面電極の代わりにカーボンナノチューブ薄膜透明電極を用い,透光性や意匠性の高い太陽電池を開発する.有機薄膜太陽電池を窓へ貼り付けて応用する場合,インジウムスズ酸化物透明電極側を外側へ,金属裏面電極側を室内側へ向けて設置するが,内側からみて金属裏面電極は見た目がよくない.これをカーボンナノチューブ透明電極に置き換えて,きれいな有機半導体の色を室内からみるデザイン性に優れた太陽電池を開発する.また,グラフェンを用いた有機薄膜太陽電池やペロブスカイト太陽電池の高効率化研究は世界的にみてもまだ進展途上であり,新規フラーレン誘導体や内包フラーレンを活用して高機能ナノカーボン材料の新規開発からのアプローチによりこれに取り組む.
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