研究課題/領域番号 |
15H05764
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
圓福 敬二 九州大学, 超伝導システム科学研究センター, 教授 (20150493)
|
研究分担者 |
竹村 泰司 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30251763)
吉田 敬 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (30380588)
隈 博幸 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (40435136)
榎本 尚也 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (70232965)
塚田 啓二 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (70379709)
|
研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
|
キーワード | バイオセンシング / 磁気マーカー / 磁気ナノ粒子 / 免疫検査 / 磁気粒子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、磁気マーカーを用いた先端バイオセンシングシステムを開発することを目的としており、本年度に得られた主な成果は以下の通りである。
(1)磁気マーカーの特性解析法の確立。磁気マーカーは様々な環境下で使用され、その動的磁気特性は環境の影響を強く受ける。例えば、溶液中では溶媒の粘度の影響を強く受け、また、細胞に結合した場合には溶媒中と大きく異なる特性を示す。このため、様々な環境下での磁気マーカー特性を実験と解析により定量的に明らかにした。また、市販の磁気マーカーサンプルでは粒子パラメータがサンプル内で広く分布している。このため、粒子パラメータの評価法を確立するとともに、特性の優れたマーカーのみを選別する磁気分画法を高度化した。 (2)磁気的免疫検査手法の高度化。B/F分離のための洗浄工程が不要な磁気的免疫検査法を高度化するとともに、本手法を用いてバイオ物質(C反応性蛋白質:CRP)の検出実験を行った。得られた結果は従来の光学的手法の結果と良く一致し、本手法の定量性を示した。また、光学的に透明でない試料の検出も可能である事を示し、本手法の有効性を実証した。さらに、低周波領域での磁気マーカー特性を高精度に測定するため、高温超伝導コイルを用いた磁気センサの性能を高度化した。 (3)磁気イメージング手法の高度化。傾斜磁場とマルチ検出コイルを用いた磁気粒子の3次元イメージングのための計測システムと画像再構成法を高度化した。本手法では0.1 T/m程度の弱い傾斜磁場を用いる事ができ、さらに、2次元の磁気画像データから磁気粒子の3次元濃度分布を再構成できるという他には無い特長を有する。本手法を用いて30~50 mm の深部に集積した重さの異なる二つの磁気粒子サンプルの検出実験を行い、位置精度5 mm、重さ精度数マイクログラムでのイメージングに成功し、本手法の有効性を実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は当初の計画通りに進んでおり、研究遂行において特に問題はなかった。本年度は、昨年度に引き続き、1) 磁気マーカーの特性解析法、2) 磁気的免疫検査手法、及び3) 磁気イメージング手法、を高度化した。研究実績の概要に記したようにそれぞれの課題に関して多くの成果が得られており、磁気的手法の要素技術を深化するとともに先端バイオセンシングシステム開発に向けた基盤を確立することが出来た。なお、磁気免疫についてはC反応性蛋白質の検出実験により、洗浄工程無しでの高感度検査や光学的に透明でない試料の検査が可能である事を示し、本手法の有効性を実証した。また、磁気粒子イメージングについては、磁気粒子の3次元イメージングの実験により、開発した計測システムと画像構成法の有効性を示した。これらの成果は世界的にも高い評価を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は研究の最終年度となる。これまでに蓄積した要素技術の成果を基に先端バイオセンシングシステム(磁気的免疫検査と磁気粒子イメージング)を高性能化するとともに、検出実験により本システムの有用性を実証する。これまで当初の計画通りに研究が進展しており、今後の研究遂行においても特に大きな問題はないと思われる。磁気的免疫検査に関しては、種々のバイオ物質の検出実験により洗浄工程無しでの検査法の有用性を示す。磁気粒子イメージングに関しては、乳癌検査に適用できるレベルにまでイメージング性能(粒子の3次元位置と量の検出精度)を高める。これにより、磁気的手法を用いたバイオセンシング技術の基盤を確立する。
|