研究課題/領域番号 |
15H05765
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中北 英一 京都大学, 防災研究所, 教授 (70183506)
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研究分担者 |
坪木 和久 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (90222140)
鈴木 賢士 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (30304497)
大石 哲 神戸大学, 都市安全研究センター, 教授 (30252521)
橋口 浩之 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (90293943)
牛尾 知雄 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50332961)
川村 誠治 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所リモートセンシング研究室, 主任研究員 (10435795)
山本 真之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所リモートセンシング研究室, 主任研究員 (90346073)
山口 弘誠 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90551383)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | マルチセンサー / レーダー / ゲリラ豪雨 / 降水予測 / ビデオゾンデ |
研究実績の概要 |
1.マルチセンサー観測によるメカニズムの解明:一連の、サーマル~雲形成~積乱雲の生成(タマゴ・渦形成)~発達過程を捉えるための観測を実施した。境界層レーダーの高分解能観測を開始し、グランドクラッタを取り除く技術を導入した。雲レーダーと雲粒子ゾンデとの同時観測を実施し、氷晶粒子の偏波特性や層積雲内の雲粒粒径分布を明らかにした。天頂大気遅延量の時系列変動を関数化し、その変化から水蒸気の増加時間を定量的に推定して豪雨の予兆と関連づけた。ZDRカラムの雲物理構造を知るためにビデオゾンデを用いて雨滴がどの高度まで存在するかを調べた。電磁波散乱シミュレーションを実施し2周波MPレーダーを用いた氷の粒径分布の推定手法を提案した。陸面観測により夏季都市の地表面熱収支の日変化を推定した。以上、これまで進めてきた雲という研究ステージを深化させ、加えて雲よりも前のステージについて境界層レーダーを用いて高度に解析した。 2.都市気象LESモデル開発:積雲生成実験を行い境界層を突破する熱的上昇流の特徴を解析した。熱的上昇流が持つ浮力が大きいとき、および、先行する熱的上昇流が境界層上端の安定層を解消した直後に別の熱的上昇流があったときに、境界層を突破して背の高い積雲が発生することを発見した。 3.データ同化による降水予測:線状降水帯事例を対象とした偏波レーダーのデータ同化によって、積乱雲・線状降水帯・環境場のマルチスケールでそれぞれ降水予測精度が向上することを示した。また、雲情報のデータ同化に関しても、理想実験によって効果的な同化手法を検討した。 4.水管理手法の高度化:雲レーダーを用いた危険予測手法の更なる早期化を検討した。雲レーダーを用いると、降水レーダーよりも平均的に20分ほど早期探知が可能であることを示し、渦度を用いた危険予測に関しても事例によっては10分ほど早くに危険予測が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.積乱雲内部の気流の渦管構造解析に関して、見込みよりも大きな進展があった。具体的には、雲レーダー観測によって、積乱雲のより初期にも正負渦管構造が存在することを確認でき、可視カメラ映像でも雲底でそれらしきものが見えだしている。加えて、ミクロな渦管の空間密度は危険性予測が空振りを減少させる重要な情報であることを明らかにしつつある。これらはより早期化、かつ、高精度化に直結する大きな成果である。 2.一部の観測に関して、見込み以上に充実することができた。一つ目は、“雲レーダーはそもそも何をどこまで探知することができるのかを明らかにする”という、当初計画よりさらに深化した課題にじっくりと取り組むことが可能となった。当初予定していなかった“雲のかかっている神戸六甲山山頂に出向いてのCPS観測(雲粒子の直接観測)”をも誘発し実現した。二つ目は、境界層レーダー観測において、当初計画していなかったアダプティブクラッター抑圧システムを導入することで、境界層レーダーの最大の弱点であるグランドクラッターを自動システムで取り除くことに成功した。これによって高品質の観測が実現した。 3.当初計画していなかったひまわり8号の活用による雲解析を実施した。気象庁気象衛星センターとの連携により、ひまわり8号から得られる指標RDCAを用いて、XRAINよりも早期のゲリラ豪雨早期探知が可能であることを明らかにした。加えて、ひまわり8号の疑似観測値のデータ同化による理想実験によって、降水予測へのインパクトを評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、マルチセンサーによるフィールド観測を土台として、開発してきた手法の精緻化と高度化を進めるとともに、実用化検証をも進めていく。 1.生成過程の解明:神戸観測でのデータ取得に注力して事例蓄積による更なる解明を進めるだけでなく、どの現象を現業監視すべきかという提案によって基礎観測データが将来の現業観測となるような橋渡しをする。LESモデルをメソモデルへ連結し、現業メソモデル予測の精度向上を図る。 2.発達過程の解明:最大降雨強度の定量予測に関して、雲レーダーという早期に探知できる情報を利用したアプローチと、フェーズドアレイレーダーの高頻度データを利用したアプローチを並行して進める。特に、現在見え始めている、ミクロ渦の空間密度と最大降雨強度の関係を明らかにし、より物理プロセスを踏まえた定量化予測手法を構築する。早期探知危険予測システムを単独積乱雲のみならず積乱雲群へ拡張する。 3.水災害予防への応用:現在に引き続き、国や地方行政と連携しながら、開発中の手法の実用化検証を行い、現業化システムとしてのレベルまで持って行く。
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