研究実績の概要 |
申請者らは、60ppm以下の極微量の固溶炭素の有無によって結晶粒微細化強化係数が大きく変化し、同じ粒経でも純度に応じて降伏強度が変動することを最近明らかにした。これは、鉄鋼材料の分野では従来の常識を覆す発見である。また、鉄鋼材料にはMn,Si,Ni,Cr,Pなどの置換型元素が必要に応じて添加されるが、これまで、結晶粒微細化強化係数に及ぼす置換型元素の影響については十分な調査はなされていない。本研究では、CやNをTi(C,N)として完全に固定したInterstitial free steel(IF鋼)を使用して、各種の合金元素が結晶粒微細化強化係数に及ぼす影響を系統的に調査してきた。本研究では、多結晶フェライト鋼における降伏機構を明らかにするとともに、固溶強化や結晶粒微細化強化係数に及ぼす各種合金元素の影響を系統的に調査して、鉄鋼材料の強度設計に関するデータベースを再構築することを目的としている。平成30年度は、研究実施計画に従って、Mn,Si,Ni,Cr,Pなどの置換型合金元素を添加したフェライト鋼において、結晶粒微細化強化係数ならびに固溶強化に及ぼす合金元素の影響を継続して調査した。また、多結晶フェライト鋼の降伏メカニズムについては、三次元アトムプローブならびにナノインデンターを用いた解析により、粒界に偏析した炭素ならびに窒素と結晶粒微細化強化係数の間に強い相関性があること、粒界に偏析した炭素ならびに窒素の存在で粒界からの転位放出に必要な臨界粒界応力が高められることなどを明らかにした。さらに、結晶粒微細化強化係数に及ぼす置換型合金元素の影響については、Ni、Si、Mnはそれを高め、CrやPはほとんど影響を及ぼさないことも分かった。
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