研究課題/領域番号 |
15H05769
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
民谷 栄一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60179893)
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研究分担者 |
吉川 裕之 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00314378)
斉藤 真人 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80457001)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | バイオセンサー / ナノバイオデバイス / BioMEMS / 生体分析 / 医療診断 / プラズモニクス / 電気化学発光 / デジタルデバイス |
研究実績の概要 |
本課題では、電気化学発光や局在プラズモン共鳴デバイスを活用してデジタルバイオ分子デバイスに関する以下の基盤研究を推進した。研究項目1)極微量流体バイオデバイスの設計創成では、マイクロ流路を用いてオイルに囲まれた液滴=ドロップレットを微小区画としてPCRを行うデジタルドロップレットPCR に着目し、ドロップレット内に1分子DNAを封じ込め、そこからDNA増幅反応を行ない、各液滴内の増幅された遺伝子の有無をエンドポイントでカウントすることで、存在したDNA分子の統計的により確からしい絶対定量を行う。ジグザグ状微小流路反応場の一部を加熱しながら同時に遠心させることで液滴に浮力を発生させ、液滴を自発的に移動させて迅速なddPCRを行なえる遠心浮力促進型ddPCR法を開発した。研究項目2)バイオセンシングデバイスの設計創成では、基板表面に集光したレーザービームの反射光強度変化から酵素反応を検出する我々独自の光ピックアップ型バイオセンシング技術を高度化し、疾患や健康状態の指標となるタンパク質バイオマーカーを極微量サンプルから検出する迅速高感度な光ピックアップ式マイクロELISA法の開発を行なった。すでに、CRP 測定用のELISA チップを用いて、高感度なCRPの定量測定に成功した。研究項目3)デジタルバイオデバイスの応用評価では、構築した発光イメージング系を用いて活性酸素の一種である過酸化水素を分解する酵素カタラーゼの計測を行った。カタラーゼが電気化学的に生成した活性酸素種を基質として反応し、これによりルミノール発光が消光する変化量を計測解析した。磁性粒子に固定化することで90fMの検出が可能で、100万倍以上の高感度化を実現した。酵素反応や抗酸化分子と連動したバイオ分析を行うプラットフォームを提案し、カタラーゼ活性、糖化アルブミンなどの高感度化などを実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠心促進浮力駆動デジタルドロップレットPCRシステムにおいては、ドロップレット内にDNA分子を封じ込めてDNA増幅反応を行うことで絶対定量が可能となるデジタルドロップレットPCRにおいて簡易迅速化が大きな課題であったが、遠心場とマイクロ流路を用いて、微小液滴の生成および浮力を利用した移動と熱交換を実現するための熱空間制御方法を構想した。これは、ジグザグ状微小流路反応場の一部を加熱しながら同時に遠心させることで液滴に浮力を発生させ、液滴を自発的に移動させた。これらを用いて液滴駆動制御や反応諸条件を詳細に検討したことで、遠心促進浮力駆動ドロップレットPCRおよび迅速反応が可能であることを実証できた。迅速高感度な光ピックアップ式マイクロELISAシステムにおいては、光ピックアップ式マイクロELISAにおいては、レーザー集光場で誘起される自己触媒的酸化重合反応機構の探索、ディスク型チップによる微量・迅速・高感度なバイオマーカー測定など、デジタルバイオ分子センシング実現に向けた研究およびデバイス開発が順調に進んでいる。また、局所的な光電場増強やプラズモン誘起反応のための貴金属ナノ構造作製法として、光で構造や分光特性を制御できる独自のプラズモニックめっき法を開発し、表面増強ラマン散乱やLSPRを利用したデジタルバイオ分子センシングに繋がる成果が得られている。電気化学発光システムを用いたデジタルバイオデバイスは、検量が不要な分子の絶対量を測定できるセンサーデバイスとして究極の測定手法とも言える。今回の電気化学発光システムとカタラーゼの消光現象を活用した測定方法は申請者が開発した独自の手法であり、マイクロチャンバーアレイを有するプリンタブル電極も独自に開発しており、当該分野で世界的にも先行している。
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今後の研究の推進方策 |
今までに構築したシステムの性能の向上を計るための取り組みと実用に向けた連携研究者との更なる連携を進める。既に阪大医学部病院、阪大歯学部病院との連携は進めており、標準試料を用いた検討は開始している。特に、デジタルバイオ分析のために、遠心駆動デジタルドロップレットシステムや電気化学発光マイクロチャンバーアレイ電極システムなどを創成しており、更なる改良をすすめ、システムとしての連携を進める。またこれらの成果の世界的な情報発信を進めていく。
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