研究課題/領域番号 |
15H05770
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小紫 公也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90242825)
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研究分担者 |
大西 直文 東北大学, 工学研究科, 教授 (20333859)
白石 裕之 大同大学, 工学部, 教授 (50273272)
小田 靖久 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 ITERプロジェクト部, 研究員(定常) (60512209)
葛山 浩 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80435809)
坂本 慶司 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉材料研究開発部, 部長(定常) (90343904)
森 浩一 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90375121)
假家 強 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30451678)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / エネルギー全般 / プラズマ / 放電 / レーザー |
研究実績の概要 |
主に3つの研究テーマに並行して取り組み、以下の成果を得た。 1)レーザー放電爆轟波の1次元伝播実験:1次元伝播を実現するにはビーム径の拡大が非常に有効であり、その際放電伝播速度がレーザー強度に対して一意に定まることを発見した。以降の全ての実験は十分なレーザー径を用いて行った。レーザー強度依存性(はガス種によって大きく異なることが明らかとなった。(デトネーション理論では普遍)また発光分光計測も行い、中性粒子の励起温度、電子密度も取得し、計算シミュレーションで再現すべき貴重なデータが得られた。 2)ミリ波放電爆轟波の1次元伝播実験:筑波大学の28 GHzジャイロトロンを用いた放電実験を行ない、放電閾値よりも数桁低いミリ波強度領域を世界で初めて探索した。この強度領域で放電が維持される物理的メカニズムがまだ提案されていないが、現在は交流電場の中でのタウンゼント放電という考え方に代わって、電子衝突や逆制動放射によって励起された中性粒子が低い電界強度でタウンゼント放電を維持するという累積電離が候補である。それを議論する材料として、中性粒子励起温度を測定することにも成功した。 3)ミリ波・レーザー放電シミュレーションコードの開発と検証:ミリ波放電二次元数値計算を行った結果、電界集中の値は小さく、2次元的な構造は伝播速度に影響しないことがわかった。さらに、意図的に高い電離周波数を仮定しないと計測された伝播速度を再現できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存のレーザー、ジャイロトロンを用いた放電実験と、それらを再現する数値計算モデルの見直しは順調に進んでいる。実験結果と計算結果を定量的に比較するためには、純粋な1次元伝播での比較が望ましいが、レーザー放電では、その1次元伸展を実現する実験条件を見出した。ミリ波放電では、3次元のプラズマの複雑な構造が、伸展現象・伝播速度には大きな影響を与えていないことを数値計算で示し、実験で観測された一見複雑で多様に見えるプラズマ構造が、伝播速度という観点では影響が小さいという知見、および今後のモデル構築方針を得た。 これらの放電実験と計算シミュレーション結果との比較検証を踏まえて、レーザー放電とミリ波放電に共通する、主として電離モデルの問題点を浮き彫りにした。現在は、絶縁破壊臨界強度よりも低い強度の電磁波ビーム内で放電が維持される新しい電離モデルについて、計算と実験の両面から定量的に検証を進めている。
ミリ波実験用の新たなジャイロトロンの開発・導入は、そのスペックの上方修正、新規設計を試みて見直しを行ったため、その本格的な稼働は最終年度となる予定であるが、本研究の成果として得られる新しい計算モデルが予測する放電伝播現象を、新しいジャイロトロンを用いた実験結果で検証できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ジャイロトロン出力は電子銃の供給できる電子ビーム電流に直接依存しており、電子銃は最も重要な要素の一つと言えるが、新規電子銃の電極設計は既に完成しており、カソード部分の製作・納品もH29年度に完了した。現在は電極間の絶縁セラミック、アノードや溶接を含む電子銃の詳細設計の段階に入っている。H30年度初めに発注し、数カ月での納品を見込んでいる。 共振器からビームとしてミリ波を取り出す放射器と、そのビームを整形する位相補正鏡からなるモード変換器の設計のため、3次元の準光学計算を行っている。モード変換器の形状や取り付け位置はジャイロトロンの発振モードに強く依存しており、モード変換器を検討することで逆に最適な発振モードなどが決定される。現在、急ピッチで設計を進めている段階である。既に放射器・ミラーを収めるミラーボックスと電子銃を接続する筐体は納品済みであり、H30年度中に完成予定。
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