研究課題
本年度は,太平洋および南鳥島より採取された「海の鉱物資源」1560試料について,粉末X線回折(XRD),蛍光X線分析装置(XRF)および誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-MS)を用いた基礎記載・全岩化学分析を行い,地球化学データセットの構築につとめた.また,海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で南鳥島周辺海域で1回の調査航海を計画・実施した.このMR15-02航海 (2015年6月22日~7月17日)では16本のピストンコアを採取し,現在これらの試料についても,基礎記載・全岩化学分析および解析を進めている.これらの堆積物コアの基礎記載および全岩化学分析の結果,南鳥島EEZ内の有望海域315km2における詳細なレアアース資源量を見積ることができた.さらに,南鳥島の北西1000kmに位置するODP site 1149から,南鳥島以外で初めて総レアアース濃度が7500ppmに達する超高濃度レアアース泥を発見し,超高濃度レアアース泥が南鳥島だけでなく太平洋の広い範囲に分布している可能性が明らかになった.さらに,南鳥島で得られたKR13-02 PC05コアのOs同位体比を測定し,その年代決定を行った結果,超高濃度レアアース泥層の堆積年代を推定することができた.見積もられた年代は海洋循環が強化されたと考えられる時代と一致することから,超高濃度レアアース泥層は,(1)この海洋循環の強化によって深海に蓄積された栄養塩が表層まで供給されることで生物生産性が増大し,(2)レアアース泥のレアアースホスト相である生物源リン酸カルシウムの供給が増加したことにより,生成された可能性が示唆された.
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は「海の鉱物資源」1560試料の基礎記載・全岩化学分析を行い,南鳥島EEZ内の超高濃度レアアース泥分布エリアにおける詳細な地球化学的情報を取得した.そのデータを解析した結果,有望海域315km2におけるレアアース資源量の見積りを行うことができた.また,南鳥島以外の海域においても初めて超高濃度レアアース泥を発見することができたことなど,太平洋に分布する「海の鉱物資源」の基礎的データの収集は順調に進展している.さらに,南鳥島で得られたKR13-02 PC05コアのOs同位体年代決定を行った結果,超高濃度レアアース泥層の堆積年代を推定することができ,その成因に関して極めて重要な示唆が得られた.以上のことから,本研究は当初計画以上に進展しているといえる.
平成28年度以降も,基本的には当初の研究計画・方法を踏襲し,研究を進展させていく予定である.試料の採取については,今後も南鳥島周辺の航海調査が引き続き計画(平成28年度に2回)されており,DSDP/ODP/IODPコア試料の取得手続きも進行中である.来年度以降もこれら「海の鉱物資源」試料の基礎記載・全岩化学分析を行い,データの蓄積およびその解析に努める.Os同位体比年代測定についても他のコアの分析を進め,地球表層環境の変動と超高濃度レアアース泥の生成についてのリンケージの解明を行っていく.また,陸の試料についても試料採取・基礎記載・化学分析を続けて行い,これらの年代決定および成因解明を進めて行く.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 6件、 査読あり 23件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 4件)
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