研究課題
(1)TGF-β-Smadのダイナミックな転写調節機構の解明:H27年度に続きTGF-βとRasがん遺伝子の協調作用とp53ファミリー(p53とp63)との関連を中心に明らかにした。p63のスプラインシングアイソフォームΔNp63の標的遺伝子をスクリーニングしたところ、脱リン酸化酵素DUSP6とDUSP7がΔNp63で誘導されることが明らかとなった。さらにDUSP6、DUSP7が細胞運動や浸潤を促進することを確認し、TGF-βがRasとp53ファミリーの協調作用によりがんの進展に関与する機構を明らかにした。(2)TGF-βによるEMTの調節機構と多彩な表現型の解析:乳がん細胞株でZEB1の転写制御機構を網羅的に検討した結果、ZEB1は炎症関連遺伝子群の発現を制御すること(ZEB1関連分泌、ZEB1-SP)を見出した。ZEB1のノックダウンによってこれらの炎症関連因子のタンパク発現が低下し、逆にZEB1の過剰発現によって分泌因子の発現が上昇することを見出した。このZEB1の作用は、これまでに知られていたTGF-βシグナルとZEB1の関係によるものとは独立したメカニズムによることが示唆された。我々はFAIRE-seqを用いて、クロマチンの変化に伴うTGF-β刺激後の遺伝子発現の変化をがん遺伝子Rasシグナルの存在下でマウス乳腺上皮細胞を用いて網羅的に検討した。TGF-βとRasは協調してCdh1やEsrp2などの上皮細胞関連遺伝子、Cdh2、Fn1などの間葉系細胞関連遺伝子などのクロマチン構造に特徴的な影響を与えた。TGF-βとRasシグナル存在下でETSファミリーの転写因子のEtv4やEtv5の発現が認められ、クロマチンへの結合が示唆された。Gene Ontology解析によりEtv4とEtv5がMmp13の発現や細胞浸潤能に関与していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に従い研究を順調に推進している。いくつかの興味深い成果が得られ、英文原著論文を発表または投稿準備中である。
当初の計画に沿って順調に研究が進行している。引き続き、計画に沿って研究を行う予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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