研究課題/領域番号 |
15H05777
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
寺北 明久 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (30212062)
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研究期間 (年度) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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キーワード | オプシン / 非視覚 / 松果体 |
研究実績の概要 |
オプシンの分子特性と松果体波長識別及び副松果体光受容細胞に関わる解析を行い、以下の結果が得られた。 ・情報伝達の解析:松果体のRNAシークエンスにより見出したcGMP分解酵素(PDE)について、そのサブユニットの1つに関して、数種類の遺伝子を得た。また、in situ hybridizationによる局在解析に進むことができた。 ・松果体オプシンの分子特性と波長識別機能の関連:ゼブラフィッシュの松果体オプシンの内の1つに代わり、視覚オプシンを発現させたゼブラフィッシュ変異体について、その系統を確立した。二光子励起レーザー顕微鏡によるカルシウムイメージング等で、松果体オプシンの分子特性と細胞応答との関係を調べたところ、比較的強い光条件下では、1つのオプシンにより、波長識別がなされていることが示され、予想外の結果が得られた。 ・UV光/緑色光の波長識別の生理機能の解析:順行性や逆行性のトレーサー実験により、松果体から脳内の様々な部位へと神経投射していることがわかった。GCaMP(GCaMP6s)脳全体に発現させた個体を用いて、上述の投射部位について、UVと緑色光の波長成分の変化に伴う、神経終末のカルシウム濃度変化(活動)を、二光子励起レーザー顕微鏡を用いた蛍光イメージングにより詳細な解析が可能となった。 ・松果体の光受容細胞の役割に関する解析:ゼブラフィッシュ卵を、受精後直ちに、様々な光条件下で飼育し、副松果体からの入力がある手綱核での左右性決定に関わる分子の発現量と光条件との関係を解析した結果、手綱核の形態的な左右非対称性と光条件の関係について、野生型やパラピノプシン欠損個体においては、明確な関係がないことが示唆された。副松果体には異なるオプシンが発現していることを見出したので、両方のオプシンを欠損した個体での解析が必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
副松果体での光受容細胞の機能解析がやや遅れているが新たなオプシンの発現を見出し、より厳密な解析が行える状況が整った。また、松果体オプシンと視覚オプシンを入れ替えた変異体の解析から、1つの光受容細胞でも波長識別が可能であるという新規の予想外の発見があり、今後の研究の展開が期待できる。以上のことから、全体として、おおむね順調であると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
パラピノプシン遺伝子が破壊されたゼブラフィッシュを用いて、副松果体の解析を進める過程で、副松果体にパラピノプシン以外のオプシンが発現していることを見出した。そこで、この新たに存在を確認したオプシンの遺伝子破壊個体の作製を行い、系統を確立しつつある。両方のオプシンを欠損している個体の系統を確立させ、それを用いて解析することにより、副松果体に存在する光受容細胞の光受容について、さらに厳密に解析できると考えられる。また、1つのオプシンによる波長識別が起こる光強度を厳密に検討することにより、波長識別の生物学的意義の推測が可能であることも期待できるので、波長識別機構についての新規発見を基軸に研究を展開する予定である。
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