研究課題
体表の紋様や体色により捕食者を撹乱する擬態は広範な生物種に認められるが、その形成メカニズムはよくわかっていない。擬態のような複雑な適応形質は1遺伝子の変異ではなく、染色体上の隣接遺伝子群「超遺伝子(supergene)」が制御しているという仮説がある。我々はシロオビアゲハのベイツ型擬態の原因が130kbに及ぶ染色体領域にあり、さらに染色体の逆位によってその領域が進化的に固定されていることを見出した。そこで、本研究では複数のアゲハ蝶をモデルとして(1)supergeneの構造と機能、(2)染色体上のsupergeneユニットの出現と安定化機構、(3)近縁種でのsupergeneの進化プロセスを解明する。転移因子の関与なども含め上記の結果を統合し、ゲノム再編成による擬態紋様形成機構を体系的に解明することを目的とした。本年度は、supergeneのユニットの全体像を明らかにするために、supergene内部及び近隣の遺伝子の発現と機能について解析を進めた。supergene内部のUXT, U3X, dsx-H, Nach-like、および近隣のProspero, sir2について発現を調べると、Nach-likeは生殖組織以外ではほとんど発現が見られないが、それ以外の内部遺伝子はシロオビアゲハとナガサキアゲハ擬態型メスの後翅、ナガサキアゲハ擬態型腹部のいずれにおいても、非擬態型より強く発現していた。ProsperoとSir2は擬態形質と関連性のある発現を呈示した。一方、従来行っていたelectroporation-mediated functional analysis (EMFA)法のプライマーと電極を改良することにより、遺伝子発現をより効率的にノックダウン(KD)するシステムをこのシステムにより、内部遺伝子群の擬態への関与を再検証した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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