研究課題
いもち病はイネの最重要病害である。いもち病に高度抵抗性を示すイネの育種を最終目標として、イネ-いもち病菌相互作用の分子機構を解明する。そのために、(1)三組のイネ抵抗性タンパク質(R-protein)-いもち病菌非病原力因子(AVR)の分子間相互作用解明、(2) 対となって機能するイネ抵抗性遺伝子(Paired R-gene)の機能解析と進化解析、(3)いもち病菌の感染にとって必要なイネ因子をコードする新規イネ罹病性遺伝子(S-gene)の同定と機能解明を実施する。平成27年度は、(1)については、イネ抵抗性タンパク質Pik-1といもち病菌非病原力因子AVR-Pikの結合結晶構造を明らかにした(Maqbool, Saitohら、2016)。本成果は、植物Nucleotide Binding-Leucine Rich Repeat (NB-LRR)型抵抗性タンパク質と病原菌エフェクターの結合構造としては世界初めての知見である。さらに、イネ抵抗性タンパク質Pii-2といもち病菌非病原力因子AVR-Piiの相互作用にとってイネタンパク質Exo70が必要であることも明らかにした(Fujisakiら、2016)。(2)については、イ対で機能するイネ抵抗性タンパク質Pik-1とPik-2をベンサミアナタバコにおいて発現し、その機能を解明する手法の確立に成功した。(3)については、イネの大規模交配集団を利用して、S-gene候補遺伝子の座乗するゲノム領域を同定した。
1: 当初の計画以上に進展している
イギリスNorwichのJohn Innes Centre, The Sainsbury Laboratoryと共同研究を実施し、イネ抵抗性タンパク質Pik-1といもち病菌非病原力因子AVR-Pikの結合結晶構造を明らかにした(Maqbool, Saitohら、2016)。本成果は、植物Nucleotide Binding-Leucine Rich Repeat (NB-LRR)型抵抗性タンパク質と病原菌エフェクターの結合構造としては世界初めての知見である。AVR-Pikの相互作用因子の同定の研究も予定を上回るスピードで進展している。さらに、イネ抵抗性タンパク質Pii-2といもち病菌非病原力因子AVR-Piiの相互作用にとってイネタンパク質Exo70が必要であることも明らかにした(Fujisakiら、2016)。
今後の推進方策は、所期の予定(1)については、Pik-AVR-PikおよびPii-AVR-Piiの相互作用に重点を置いて研究を展開する。(2)については、Pik-1とPik-2の相互作用を重点化する。(3)については、イネ大規模交配集団を活用したS-gene単離を実施する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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