研究課題
1.宿主臓器内における病原性細菌の遺伝子発現の網羅的解析による新規病原性因子の同定発現上昇した遺伝子の詳細なパスウェイ解析、及び機能分類を行い、黄色ブドウ球菌が宿主においてどのような環境におかれているかを明らかにすることができた。また、マウス臓器間で共通して発現上昇する機能未知の遺伝子についてマウスでの病原性について検討を実施し、3つの新規病原性遺伝子を見いだした。機能既知の遺伝子のうち病原性への寄与が知られていなかった4つの病原性遺伝子を同定した。前年度に見いだした新規病原性ncRNAの破壊株に対して、遺伝子の相補によって病原性が回復したことから、本ncRNAが病原性発揮に必要であることを初めて明らかにできた。また、一部の真菌についても宿主環境下における網羅的遺伝子発現変動を解析手法が確立できた。2.カイコを用いた新規病原性遺伝子の探索病原性への寄与が明らかでない機能未知遺伝子約200個について解析を実施し、新たに1つの新規病原性遺伝子の同定に成功した。残りの機能未知遺伝子については、遺伝子破壊ライブラリーを導入できたことから29年度の早い時期に解析を完了できる予定である。3.病原性遺伝子の機能解析と阻害剤の探索1で見いだした新規の病原性に関わるncRNAの遺伝子破壊株において、発現低下する遺伝子群を同定し、それらが臓器環境下で発現上昇する遺伝子群であることを明らかにした。従って、本ncRNAは病原性発揮に必要な遺伝子群の制御に関わると考えられる。また、カイコ・マウスにおいて病原性に関わることが明らかにした機能未知遺伝子について機能解析を行っており、1つについてその酵素活性、及び機能を明らかにした。さらに、化合物ライブラリーから見いだしていたカイコモデルで治療効果を示す抗菌化合物について、その標的がSigAであることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
網羅的遺伝子発現変動の結果から、黄色ブドウ球菌の宿主環境下における振る舞いの全体像を明らかにすることができた。さらに、多数の新規の病原性因子が同定され、その機能解析が進んでおり、いくつかについては生化学的な酵素活性が明らかになりつつある。従って、当初の計画通りいくつかの病原性に関与する因子について生化学的なアッセイ系の確立ができるようになり、阻害剤の探索系の構築が可能となっている。また、本プロジェクトにおいて病原性に寄与することが明らかとなったncRNAについて、その機能が宿主内で発現上昇する遺伝子機能群の発現に寄与することが明らかになったことから、本遺伝子の発現制御は感染症治療薬の探索に貢献できるが期待される。以上のことから、当初2年間の研究において計画していた、黄色ブドウ球菌の宿主環境下での振る舞いのおおよそについて明らかにでき、阻害薬探索のための道筋が立ったことから、研究は順調に進展していると判断した。
1.新規病原性因子に関する解析本研究によって見いだされている機能未知の3つの新規病原性因子については、破壊株のRNA-Seq解析を糸口とした遺伝学的、生化学的なアプローチから機能解析を実施する。カイコを用いた新規病原性遺伝子の探索は、今年度の早い段階において完了させる。カイコで病原性を低下した遺伝子破壊株については、マウスモデルにおける病原性への寄与を検討する。また、宿主内で発現上昇する遺伝子のうち未検討であるものについても同様にマウスモデルにおける病原性への寄与を検討し、病原性に寄与する機能未知遺伝子の網羅的な解析を完了させる。これらの解析により見いだされる新規病原性因子についても機能解析を実施する。2.感染症治療薬の探索について生化学的なアッセイ系が確立できた病原性因子については、化合物ライブラリーから阻害薬の探索系を構築する。病原性に関わる新規ncRNAについては、上流のシグナルカスケードを解析し、本ncRNAの機能を制御するような低分子化合物の探索系の確立に挑戦する。また、新規病原性因子については生化学的な酵素活性の評価系の確立、及び、阻害薬の探索系が構築できるか否か検討する。機能は既知であったが病原性への寄与が明らかになった3つの新規因子については、他種において立体構造が明らかなものについて、in silicoのバーチャルスクリーニング技術も取り入れて、阻害薬の探索効率を上げられないか検討する。研究体制については、昨年度と同様な体制で緊密な連絡をとりながら、研究を遂行する。
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