研究実績の概要 |
アポトーシスを起こした細胞はフォスファチジルセリン(PtdSer) を“eat me”シグナルとして提示し、マクロファージによって貪食される。私達は、死細胞の貪食に関与する分子(Tim4, MER, MFG-E8)を同定するとともに、PtdSerを細胞膜の内膜と外膜の間でスクランブルさせる分子(スクランブラーゼ, Xkr8およびTMEM16F)、外膜から内膜へ移動させる分子 (フリッパーゼ, ATP11C)を同定してきた。本研究はこれら分子の作用機序、生理作用を明らかにすることを目的としている。 本年度は、TMEM16Fの第IVおよび第V番目膜貫通領域に存在する親水性アミノ酸がリン脂質のスクランブリングに必須であることを見出した。この結果はTMEM16Fによるリン脂質の転移において親水性の残基がTMEM16F膜貫通領域の親水性残基を楚石(stepping stone)として用いているモデルを支持している。一方、ATP11Cと複合体を形成するCDC50Aに“error-prone PCR”を用いて普遍的に変異を導入、その変異体の細胞生物学的、生化学的解析から、CDC50AはATP11Cに対するシャペロンとしてばかりでなくそのATPase活性、フリッパーゼ活性にも寄与していることを見出した。また、Xkr8スクランブラーゼはアポトーシスを起こした胸腺T-細胞、脾臓リンパ球、老化した好中球でのPtdSer暴露、これら細胞のマクロファージによる貪食に必須であることを見出した。Xkr8遺伝子欠損マウスはSLE-typeの自己免疫疾患を発症し、死細胞や老化した細胞の速やかな貪食分解が生体の恒常性維持に必須であることを証明した。
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