研究課題
我々が作成したmAktDKOマウスでは、8週目以降で体重・骨格筋量・骨量が野生型マウスに比して低下していた。また、32週目以降からインスリン負荷試験にインスリン感受性の低下が明らかとなり、週齢を追う毎に悪化した。野生型・mAktDKOマウスにおいて、各時点での骨格筋の網羅的発現解析を行ったところ、mAktDKOマウスミトコンドリア機能や生合成に関与する遺伝子およびオートファジー関連遺伝子の発現低下が起きており、また骨格筋の老化を示唆する遺伝子変化が起きていた。Aktのシグナルを伝達する主要な経路として転写因子FoxOを介するものと、mTOR complex 1(mTORC1)を介する経路があると考えられる。これらの経路が、加齢によるサルコペニア形成にどのように関与しているのかを検討するために、mAktDKOマウスと、FoxO1, FoxO3およびFoxO4を骨格筋特異的に欠失したmFoxOTKOマウスを交配して、サルコペニアの表現型がどのように変化するかを検討を開始した。さらに、mAktDKOマウスと、mTOR活性を抑制しているTSC2を骨格筋特異的に欠失するmTSC2KOマウスを交配して、mTORの活性化を促すとサルコペニアの表現型がどのように変化するかの検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
27年度に予定していたmAktDKOマウス骨格筋における表現型の原因解析は、ほぼ計画通り進行しており、現在その責任シグナル伝達経路を解析中である。Akt下流のFoxO経路とmTORC1経路の種々の表現型に対する影響の解析については、dominant negative FoxO トランスジェニックマウスとの掛け合わせではFoxO下流のシグナルの十分な抑制が起きていないと考えられたため、FoxOの3つのアイソフォームを全てノックアウトするための交配が必要であったが、これに予想より時間を要しており、ようやく動物が得られつつある。TSC2ノックアウトの交配においても予定よりやや時間を要していたが、実験に供する動物が得られつつある。
mAktDKOマウスとmFoxOTKOマウスを交配したマウス、およびmAktDKOマウスとmTSC2KOマウスを交配したマウスについて、サルコペニアの表現型の解析を勧めると共に、骨格筋の網羅的発現解析などにより、サルコペニア発症の分子メカニズムを検討する。mAktDKOマウスは、骨格筋の老化や、骨量の低下、寿命の短縮などの老化促進の表現型が認められる。mAktDKOマウスの死因の解析を進める。また、骨格筋以外での老老化関連因子の発現を検討する。さらに、骨量の低下や全身の老化を促進する骨格筋由来因子の同定を網羅的発現解析やメタボローム解析、miRNA発現解析などから検討する。
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