カントの人間学と道徳哲学で繰り返し言及される、思考の秩序とも呼びうる原理としての「思考様式」がパトリオティズム論に導入されることによって、素朴な感情とともに理解されうる「祖国」を、純粋な法概念に基づく「共和制」として把握し、現状をパターナリスティックな統治(専制)として理解するパトリオティズムの視点が開かれる。カントは、フランス革命の考察において、熱狂とともに共和制を求める思考様式がドイツの人々にも広がっていることを論じ、国家元首(君主)にも祖国的な思考様式をもつことを促している。カントのパトリオティズムをめぐる議論は、共和制の実現に向けた戦略的な議論の一環として展開されているのである。
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