研究実績の概要 |
本研究の目的は、皮質脊髄路軸索が再生する際の、分子生物学的なメカニズムを解明し、その発現を操作することで、脊髄損傷後の皮質脊髄路の軸索再生を促進させることである。皮質脊髄路神経細胞が、発達期に軸索を伸長させる際、あるいは、軸索損傷後に、移植された神経幹細胞内へと再生する際に、転写因子cJunの発現を上昇させることを見出した。そこで、cJunの発現を調節する、 dominant-negative form, wild type, constitutively active form, control,の4種類のadeno-associated virus (AAV)を作成し、ラット大脳運動野に注入した。遺伝子導入された皮質脊髄路神経細胞の軸索はreporter-geneである赤色蛍光蛋白(RFP)で良好に標識され、頚髄で確認できた。また、これらのAAVを注入後、第4頚髄の部分損傷部に神経幹細胞を移植した。現在、これらのラットの皮質脊髄路軸索の移植細胞内への再生の程度を比較検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に、転写因子cJunの発現を調節する、control, dominant-negative form, wild type, constitutively active formの4種類のadeno-associated virus (AAV)を作成した。続いて、ラット第4頚髄の部分損傷を作成し、損傷部に神経幹細胞移植を移植し、大脳運動野に、上記のAAVを注入した(急性期モデル)。本年度は、これらのラット脊髄、大脳の組織標本を作成し、詳細な軸索再生の評価を行う。また、皮質脊髄路神経細胞の、遺伝子導入後の病的状態の有無についても、検討を行う。また、ラット頚髄の慢性損傷モデルを作成後、同様に、上記のAAVを大脳運動野に注入し、cJunの発現を調節することで、慢性期に低下した皮質脊髄路神経細胞の再生能を上げることができるかも検討する。
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