研究課題
本研究の目的は、皮質脊髄路軸索が再生する際の鍵となる、候補シグナルを同定し、その発現を操作することで、皮質脊髄路軸索の再生関連遺伝子を探索することである。まず、皮質脊髄路神経細胞が、発達期に軸索を伸長させる際、あるいは軸索損傷後に、移植された神経幹細胞内へと再生する際に、転写因子cJunの発現が上昇することを見出した。cJunは末梢神経の再生関連遺伝子として同定されており、中枢神経でも同様であるという仮説を立てた。まず、cJunの発現を調節する、 dominant-negative form (DN-cJun), wild type, constitutively active form (CA-cJun), controlの4種類の遺伝子に、赤色蛍光蛋白(RFP)をreporter-geneとして有するadeno-associated virus (AAV)を作成した。これらAAVをラット大脳運動野に注入し、皮質脊髄路神経細胞に遺伝子導入を行ったのち、第4頚髄の部分損傷部にGFP陽性の神経幹細胞を移植した。移植後約8週で還流固定し、GFP陽性細胞内にあるRFP陽性軸索を再生軸索として定義し、軸索再生の程度を定量した。その結果、皮質脊髄路軸索の移植細胞内への再生量は、AAVの4種類の間に有意な差がなかった。このことは、cJunは皮質脊髄路の再生関連遺伝子ではないことを示している。また、中枢神経の神経内在性の再生メカニズムは、末梢神経と異なるため、中枢神経再生のためには、末梢神経で得られた知見の応用ではなく、中枢神経独自の知見を構築する必要があると考える。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Medicine
巻: 22(5) ページ: 479-487
10.1038/nm.4066