研究課題
上皮細胞層に、がん変異細胞が生じた時、その変異細胞は正常細胞層から排除される。この現象は、変異細胞が単独で存在するときには見られない。そのため、変異細胞側からシグナル発信により、正常細胞の抗腫瘍能を惹起していると考えられる。しかし、この変異細胞からのシグナルの実体は不明である。正常細胞で発現が亢進している遺伝子の更に下流で発現しているタンパク質に注目したところ、プロスタグランジン群であることが分かった。種々の解析から、特定のプロスタグランジンが変異細胞の逸脱能を抑制していることがわかった。本研究から、変異細胞自身が逸脱しようとすることを、正常細胞側からのシグナルが制御することが明らかとなった。概要としては、同定した遺伝子の解析をおこなっている過程で、液性因子の上流であることが分かった転写因子COX-2が発現亢進していることに注目した。COX-2の正常細胞側でのノックアウトは、変異細胞の排除効率を促進した。COX-2の下流で発現を制御されている同液性因子は、プロスタグランジン・ファミリーに属し、正常細胞から放出され、変異細胞の逸脱効率を負に制御することが分かってきた。このことから、正常細胞側からのシグナルも変異細胞の排除を制御することが分かってきた。当初の目的としていた、変異細胞と正常細胞のコミュニケーションに関与する細胞外シグナルを同定するという目的は達成された。さらなる解析をするため、作製したレポーター細胞を用いて、CRISPR/Cas9スクリーニングをおこなう予定である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc Natl Acad Sci USA.
巻: 114 ページ: E2327-E2336
10.1073/pnas.1701746114.