研究課題
Cp*金属触媒を利用したC-H官能基化反応における新たな立体化学の制御方法を確立することを目指し、キラルカルボン酸およびキラルアニオンを利用した検討をおこなった。(1) キラルカルボン酸の利用市販のキラル原料から、パラジウム触媒によるカルボニル化と、ニッケル触媒によるクロスカップリング反応によって、容易に様々な誘導体を合成できるキラルカルボン酸を設計し、合成した。これを用いてロジウムおよびイリジウム触媒を用いた不斉C(sp2)-H官能基化反応の検討をおこなったところ、いくつかの反応で中程度のエナンチオ選択性が得られた。キラルカルボン酸を用いた不斉C-H官能基化反応は、アミノ酸誘導体とパラジウム触媒を用いた系を中心に報告があるが、これは高原子価のロジウムおよびイリジウム触媒に用いた数少ない例である。(2) キラル対アニオンによる立体制御上記のキラルカルボン酸は、C-H結合の切断に関与することで、立体選択性を発現させるため、その後に起きる求電子剤やオレフィンの挿入といった段階の立体制御は困難である。この問題点を解決するために錯体の対アニオンとしてキラルなアニオンの導入を試みた。この場合、カチオン性の中間体がもう一方の基質と反応する際に、キラルな対アニオンによる不斉環境が形成されるため、触媒的な立体制御が可能になると考えられる。種々の触媒、基質、反応剤およびキラル対アニオンを検討したところ、現在までに最高80% ee程度のエナンチオ選択性で付加反応が進行することを見出している。キラル対アニオンを用いた立体制御は金触媒等において既に確立された方法ではあるが、高原子価コバルト、ロジウムおよびイリジウム触媒によるC-H官能基化反応へと展開したものとしては初の例となる。(3) この他コバルト触媒によるアルケニル化やトリフルオロメチルチオ化反応の検討をおこない、これを達成した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Organic Letters
巻: 18 ページ: 2216-2219
10.1021/acs.orglett.6b00846
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