研究課題
これまで申請者は抗がん剤ライブラリーを用いたスクリーニングにより、トポイソメラーゼ阻害剤であるトポテカンががん細胞死だけではなく、がん細胞からの免疫賦活化DNAの放出を促進し、樹状細胞におけるがん免疫の活性化を誘導することを明らかとした。しかし、この免疫賦活化DNAの産生機構は不明であったため、本研究ではトポテカンによる免疫賦活化DNAを介したがん免疫の活性化機構の解明を行うことを目的とした。本研究の結果より、担がんマウスにおいてトポテカンの投与は樹状細胞とCD8陽性T細胞の活性化によるがん免疫の誘導を促進した。これらのがん免疫の活性化は細胞内DNA受容体であるcGASとその下流シグナル分子であるSTINGに依存しており、STING欠損マウスにおいてはトポテカンの投与による腫瘍の縮小は見られなかった。またトポテカンによりがん細胞から放出される免疫賦活化DNAはエクソソームに内包されており、このDNA内包エクソソームが樹状細胞に取り込まれることでSTING依存的ながん免疫応答が誘導されることが判明した。このトポテカンによるDNA内包エクソソームの放出はアポトーシスやネクロプトーシスなどに代表される既知の細胞死経路とは異なる未知の細胞死経路を介して誘導されていることが示唆されたが、残念ながらその未知の細胞死経路の解明までは本研究では達成できなかった。よって未知の細胞死経路とDNA内包エクソソームの放出の詳細については今後の研究から明らかにしていく予定である。これらの結果は抗がん剤処理したがん細胞由来DNAがSTING依存的ながん免疫を活性化させるアジュバントとしての機能を持つことを示唆する。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Immunology
巻: 198 ページ: 1649-1659
10.4049/jimmunol.1601694.