研究実績の概要 |
近年蔓延しているさまざまな生活習慣病に対し、治療法および治療薬の研究・開発が日夜行われている。特に最近注目を浴びているのは、痛風や尿路結石など、人体内に蓄積された微結晶が原因で生じる疾患である。一般的に、痛風はプリン体を多量に含む食品の過剰摂取により体外に排泄しきれなかった尿酸と血液中のナトリウムが結合し針状の結晶が蓄積される。この尿酸ナトリウム結晶は体温の低い母指関節等に好発し、関節の炎症や激痛を引き起こす。現在、生体内における生成過程途上の尿酸ナトリウム結晶がどのように磁場応答するかについての知見は未だ無い。そこで,本研究は痛風の原因物質となる尿酸ナトリウム結晶の磁場中観察システムの構築および結晶化の過程における磁場効果の検討を目的とした。前年度は、実験システムの構築として低温恒温水槽を導入し、0℃~40℃までの温度範囲で±0.1.℃の精度で温度をコントロール可能で、サンプルを入れた容器に一定の温度の水を循環させ磁場内・外での測定システムの開発に成功した。今年度は構築したシステムを用いて、実際に磁場下で結晶を生成させ、電磁石による磁場中で生成した結晶と,対照実験としてマグネット外の無磁場空間にて生成した結晶との違いを比較・検討を行った。実験は磁場内・外で結晶化する過程の透過光強度を時系列的に測定した。その結果、磁場外で生成した結晶と比べ磁場中で生成した結晶は透過光強度の変化率が小さかった。特に、磁場外の結晶においては、測定開始2時間後辺りから急激に増加が見られた。今後は永久磁石によるシステムを開発することで長時間の測定を可能にし,さらにサンプリング数を増やすことでより詳細に検討する。
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