研究課題/領域番号 |
15H06005
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
瀧田 敦子 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90756959)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | インデンテーション試験 / 遷移クリープ / 定常クリープ / 鉛フリーはんだ / 応力-ひずみ曲線 / 有限要素解析 |
研究実績の概要 |
遷移クリープ特性評価の確立のためには,応力-ひずみ関係を利用して弾・塑性ひずみとクリープひずみを分離することが不可欠であり,そのために本年度は圧子押込み試験から押込み工程における応力-ひずみ関係を取得することを目指した. 微小領域における単軸応力下の変形挙動を評価するために,主応力分布を基に決定できる半球面が応力評価基準に適していることを昨年度までに明らかにしている.基準面積の決定には,除荷工程から取得可能な圧子と試料の接触部における押込み深さが必要であり,圧子押込み工程で複数回の除荷を行わなければならない.そこで,押込み,深さ保持,除荷から成る負荷ステップを繰り返し,目標の押込み深さまで圧子を押込む新しいインデンテーション試験を提案した.ANSYSを用いた弾・塑性解析でこの試験の数値実験を実施した. すでに提案済みの圧子押込み試験による定常クリープ評価法では最大主応力の球状等高面の下半分を応力評価の基準面と定義しているが,計算される応力は押込み深さに依らず一定であり,試料の引張強さに相当することが分かった.また,主応力に限らず,相当応力,相当ひずみも球状に分布することから,応力-ひずみ導出のための測定点を検討する必要があり,各節点の節点解から応力-ひずみ-押込み深さの関係を調査した.その結果,押込み深さに対する応力,ひずみの変化は測定位置に依存するが,同一の点で測定された応力とひずみの関係は測定点に依らず引張試験で得られる応力-ひずみ関係に一致した. これを受けて,試料内部の任意の点における応力を取得する方法を検討した.応力等高面の形状に基づき任意の点,圧子と試料の接触境界面を通る球面の半球面を基準面とした.節点解の相当応力変化と比較し,改良後の基準面を用いて単軸変形を表す押込み深さと応力関係を取得できること,また,圧痕周りの応力分布を把握できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したとおり,当初の計画では押込み試験による応力-ひずみ曲線の導出方法を確立することを予定していたが,本年度は押込み深さの増加に伴う応力変化を取得するにとどまった.押込み深さの増加に伴うひずみ変化については,次年度に確立を目指す.しかしながら,測定点を特定することができており,ひずみ評価の基準を定義するための指針は得ている.また,応力評価に関する知見は,来年度開催の国際会議AEPA2016の口頭発表に採択されている.さらに,次年度に実施を計画していたインデンテーション試験機の作製に関して,前倒しで治具の設計と制御プログラムの構築に取り組んでおり,研究計画の実施時期に多少の変更はあったがおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,数値実験を用いて圧子押込み試験により生じるひずみの評価基準を定義し,圧子押込試験におけるひずみの評価方法を提案する.本年度提案した応力評価法と同様に,任意の点に生じるひずみを推定できる評価方法とする.ひずみの評価方法を確立したのち,同一の測定箇所にて応力-ひずみ関係を取得し,数値実験に用いた構成則と比較する.これにより,圧子押込み試験のみで微小変形を表す応力-ひずみ関係を取得できることを示す. 階段波負荷の圧子押込み深さ保持試験を数値実験で実施し,提案予定の手法を用いて押込み工程の瞬間的押込み部と深さ保持部それぞれの終了時で応力-ひずみ曲線を取得する.これらを比較することで,弾・塑性ひずみとクリープひずみを分離する.すでに提案済みの定常クリープ評価法を用い,さらにクリープひずみを遷移クリープひずみと定常クリープひずみを分離して,圧子押込み試験により遷移・定常クリープ変形の評価手法を確立する. また,上記の項目と同時進行で,所有の万能試験機をベースとしたインデンテーション試験機を作製する.試験機の構成機材を固定する治具を製作し,試験機の制御にはLabviewを用いる.来年度12月を目途に,完成を目指す.作製するインデンテーション試験機を用いて階段波負荷の繰返し圧子押込み試験を実際に行い,圧子押込み試験による遷移・定常クリープ評価の試験方法を確立する.
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