現在、慢性の不整脈で最も頻度が多い心房細動は、加齢と共に罹患者が増加し、80歳以上では人口の10%にのぼるという。心房細動では,心房収縮の欠如,不適切な心室拍数による心機能低下や胸部症状が出現しうるだけでなく、脳塞栓症のリスクが増大することから、その予防や治療が重要な臨床的課題となっている。心房細動を起こすのは、心房内を不規則に興奮が旋回するリエントリーと考えられているが、多くの心房細動は肺静脈を起源とした異常興奮が重要な役割を果たすことが示唆されている。申請者はこれまで、ラット肺静脈の心筋細胞において、心房や心室の筋肉細胞では観察されない特徴として、ノルアドレナリン負荷により容易に自動能を獲得することや、過分極活性型Cl電流が存在することなどを報告してきた。
本研究の目的は、肺静脈心筋で観察されるCl電流の分子実態をクローニングし、蛋白構造を予測する事で、より具体的な治療標的とすることである。今年度は遺伝子導入装置を購入し、遺伝子工学的な実験手法を用いて、肺静脈から過分極活性型Clチャネルをクローニングした。今後、Clチャネルの物理生化学的な特徴を確認し、修飾蛋白の存在などを幅広く検証していく。
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