平成27年度の研究計画は、窒素含有樹脂の水蒸気分解による原料回収試験および熱重量分析による反応速度解析であった。そこで、今年度は、窒素含有樹脂であるポリイミドとして代表的なカプトン(デュポン・東レ)を試料に用い、その水蒸気分解挙動を検討した。分解温度を500~900 ℃として水蒸気添加の効果を検討した結果、500 ℃において、水蒸気を添加することで僅かであるが液体生成物が増加した。これは、水蒸気添加によってイミド環が開裂する加水分解反応が進行したためである。700 ℃では、水蒸気雰囲気下においても熱分解反応の影響が相対的に強く、水蒸気の効果は確認されなかった。一方、900 ℃では、炭化したポリイミドの水性ガス反応が進行し、合成ガス(H2+CO)を主成分とする気体生成物および1800 m2/gを越える高比表面積の活性炭を得られることが明らかとなった。気体生成物は約2000 mL/g-sampleであり、そのH2/CO比は1.3であった。熱重量分析装置を用いて、イミド環の開裂が主となる反応温度500 ℃前後において、水蒸気分解の反応速度解析を実施した。その結果、熱分解条件における見かけの活性化エネルギーは276 kJ/molであり、水蒸気雰囲気下では187 kJ/molに低下することを確認した。 合成ガスや高比表面積の活性炭を得られた一方で、ポリイミドの水蒸気分解においては、有毒なシアン化水素が生成することも確認された。
|