現代においてハワイの伝統舞踊フラは、ナショナリズムとグローバリズムが絡み合う形で発展を遂げている。その要因は、多文化共生主義の普及する現代にあって、日本人をはじめとする非ハワイアンの側に「フラの真正性」を求める機運が高まっていることもさることながら、1970年代以降に本格化した先住民権利回復運動のなかでフラをハワイアンのアイデンティティ・シンボルとして構築し、それを世界に向けて発信したハワイアン側の戦略に求められる。 そこで本研究は「現代ハワイアンの歴史的記憶とフラ―メリーモナーク・フェスティバルの検討を中心に―」を課題とし、ハワイアンの歴史的記憶から現代におけるフラを分析する視座のもと、メリーモナーク・フェスティバルを主たる研究対象として、これにかかわるハワイアンの歴史的記憶の構築過程を分析した。 平成28年4月には、ハワイ島ヒロで開催されたフラの競技大会メリーモナーク・フェスティバルの現地調査をおこなった。さらに、文献調査をおこなった結果、以下の2点が明らかになった。第一に、ハワイアンにとってのフラは、自民族文化が蹂躙されたという歴史的記憶を体現する媒体である一方で、ハワイでは観光資源として積極的にフラを活用しようとする動きがみられることである。第二に、日本人フラ愛好者にとって本場でのフラ体験は真正性追求の精神から発したものであり、その熱狂性に乗じたフラビジネスがさかんに展開されているということである。
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