今年度はズームイン法を用いた高精度宇宙論的流体計算によって初代銀河進化を調べた。特に、星形成効率、星からのフィードバックに着目し、それらが銀河進化に与える影響について研究を行った。結果として、(1)フィードバックによって星形成率は大きく下がること、(2)フィードバックによって銀河中心からガスが排出され星形成が間欠的に起きること、(3)星形成効率の違いによって銀河形態が大きく変わる事などをあきらかにした。前年度は星形成効率やフィードバックに関して一つのモデルにもとづいて計算していたが、今年度はこれらの依存性を調べる事で、初代銀河進化における星形成効率やフィードバックの効果を定量的に示す事が出来た。 また、初代星のみによって構成される銀河の質量・明るさの上限をライマンアルファ冷却光による輻射圧・輻射粘性に着目し、解析的なモデル化を行った。これにより、近年観測された初代星銀河の候補天体CR7は、初代星銀河ではないことを示した。 そして、半解析的手法と1次元球対称シェルに対するライマンアルファ輻射輸送計算を組み合わせる事で、高赤方偏移におけるライマンアルファ輝線銀河のモデル化を行った。結果として、ライマンアルファ輝線銀河は100km/s以上の銀河アウトフローを持っている可能性があることを提示した。また、次世代のジェームスウェッブ宇宙望遠鏡などを使えば赤方偏移10をこえるライマンアルファ輝線銀河も検出可能であることを示した。これらの研究により、初期宇宙の銀河進化過程と観測可能性について多角的に考察する事が出来た。
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