研究課題/領域番号 |
15H06026
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮内 優 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (00758691)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 数値シミュレーション / 流体構造連成 / 赤血球 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,非定常運動を伴う赤血球膜の変形挙動が膜による物質輸送に与える影響を数値シミュレーションにより解明することである.対象とする現象が,膜の移動や大変形を含む移動境界問題となっているため,流体格子と膜格子が一致しない非適合格子を用いた,流体と膜の連成解析手法および膜による物質輸送の解析手法の構築が必要となっている. 流体中の赤血球膜の運動を数値シミュレーションにより再現することを最初の目的として,2次元問題に対する埋め込み境界法のコードの開発を行った.作成したコードを用いて,流体中での膜の振動問題の解析を行い,膜内部の流体の体積保存性に良好な結果を示す,時間・空間方向の離散化手法および流速と圧力のカップリング法の選定を行った.適用する問題や格子分割数にもよるが,膜内部における流体の体積保存性は0.1%未満であり,解析に十分な精度を有すると判断した.また,正解への収束性の調査を行った. 赤血球膜の3次元計算のために,有限要素法のシェル要素による薄肉構造物の変形解析のコードを作成した.作成したコードを用いて,片持ち梁の曲げ問題を解くことでコーディングが正確であることを確認した.さらに,双線形4角形要素による赤血球の両凹形状のメッシュ分割のコードを開発した. 妥当性の検証として,傾斜遠心顕微鏡を用いた赤血球の摩擦特性の計測結果との比較を行った.2次元計算のため揚力が過大評価されたが,赤血球の移動速度に対する摩擦力の摩擦曲線の傾きは実験結果と良い一致を示すことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基盤となる流体構造連成解析のためのプログラムの作成が完了し,その妥当性の検証として傾斜遠心顕微鏡による実験結果との比較を終えたことより順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により,流体と膜の相互作用問題に対するコードについてはおおよそ完成し,次年度より膜による物質輸送に対する計算手法の開発を始める.そして,両計算手法を連成させることにより本研究の目的である,膜の非定常運動が物質輸送に与える影響を様々なパラメータに対し系統的な調査を行い,物質輸送に大きな影響を与える因子を特定する予定である.
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