研究課題/領域番号 |
15H06027
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 謙吾 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (30757589)
|
研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
キーワード | カラム溶出試験 / 卓越流路 / 孔隙率分布 / 溶出メカニズム / 重金属類 |
研究実績の概要 |
土壌汚染のヒト健康影響を防止する過程で、高額な措置費用による企業経営や自治体財政の圧迫等、社会・経済的な影響は日米欧を中心に大きな課題である。地盤環境を適切かつ合理的に管理していくためには,土壌からの汚染物質の溶出特性を適切に評価する必要がある。現在,我が国においては,バッチ式溶出試験が主に用いられているが,実環境の再現が期待できるカラム溶出試験(流通式試験)も活用されはじめている。土壌中での三次元的な卓越流路の形成の定量的な知見は乏しく,また卓越流路の形成がカラム溶出試験に及ぼす影響も不明である。 土壌からの有害物質の溶出特性を把握する試験方法の一つにカラム試験がある。カラム試験を用いた重金属類の溶出特性の評価は、重金属類の溶出メカニズムや土壌中の成分の変化などの検討の際に用いられている。しかしながら、カラムを用いた試験・研究例はあるものの、カラムサイズ(直径・高さ)や土壌充填量、通水速度は研究・事例ごとに異なり、得られた結果の統一的な評価が難しい状況である。ISOとCENの規格(ISO/CEN規格)では、試料の充填方法、カラムのサイズ(高さ30 cm、内径5 cm)、通水方法(上向流)、通水速度(15 cm/day=12 ml/h)等が共通化されている。 本手法を応用することは、土壌中の流体流動であっても可視化および評価が可能であると考えている。具体的には、土壌を樹脂製カラムに充填し、X線吸収の大きなヨウ素を含むヨウ化カリウム水溶液を流動させることで、実験的に流路を可視化する。またこれに加えて、土壌のCT測定で得られる三次元CT値分布から,Partial volume effect(CT値と孔隙体積の線形関係)を用いることにより、三次元の孔隙率分布、すなわち数値土壌モデルを構築し、流体流動シミュレーションにより、土壌中の流体流動をより詳細、定量的に評価する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に研究は進捗しつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
カラム試験は、カラム中に充填した試料に溶媒を通水させて重金属類の溶出量の測定や吸着量の測定に用いられる。また、土壌中の卓越流による溶媒の移動は、土壌と水の接触より重金属類の溶出が行われる。そこで、カラム内での重金属類の溶出メカニズムの土壌中の卓越流の変化による違いを検討する必要がある。 本研究では、土壌中の卓越流に着目し、土壌中の重金属類と溶媒の溶出メカニズムについて検討を行う。特に、カラム試験は溶媒を通水する動的な試験であるため、重金属類と土壌の基礎的な溶出メカニズム(溶出量、吸脱着、その他pH・EC、液固比など)と土壌中の卓越流の関係性について明確にしていく。 これまでの研究で用いた土壌(豊浦標準砂、ローム、まさ土)に重金属類を添加し、汚染土壌の作成を行う。作成した汚染土壌を用いてこれまでの研究と同様なカラム試験を実施する。その際に、これまでの研究より得られた土壌中の卓越流の可視化によって土壌と溶媒のカラム内での液固比や分散長が定量化できる。従来のカラム試験では、土壌の充填量と溶媒の通水量や通水時間より得ていた液固比がより詳細に評価でき、卓越流の可視化による流路の評価からカラム内の分散長を得ることができると考えられる。
|