研究実績の概要 |
情報伝達において重要な役割を果たすシナプス小胞の局在が決定する仕組みを解析するために、シナプス小胞の局在に異常をきたすarl-8のサプレッサースクリーニングを実施し、arl-8のサプレッサーとして、分子モータータンパク質unc-104の変異体を多数同定した。これらはすべてUNC-104の自己阻害を解除するようなアミノ酸置換を引き起こした。このことから生理的な状況(野生型)ではARL-8がUNC-104の自己阻害を解除することによってシナプス小胞の軸索輸送を活性化していると考えられた(Niwa et al., Cell Reports, 2016)。繊毛の異常が原因で起こるJoubert症候群の原因遺伝子TTC21B/ift-139遺伝子の機能を線虫変異体を解析した。その結果、TTC21B/ift-139遺伝子は繊毛内の物質輸送に必須の遺伝子であることがわかった。線虫の遺伝学を用いた解析によりTTC21B/ift-139は逆行性の物質輸送に必須であった。非常に興味深いことにTTC21B/ift-139の変異体に見られる表現型は順行性のキネシンの変異によって部分的に抑制することが可能であった。このことから、繊毛内の輸送のバランスを回復することでJoubert症候群の症状が和らげられるのではないかと考えられた(Niwa, Scientific Reports)。
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