研究実績の概要 |
前年度では、正常眼圧緑内障モデルであるマウス軸索挫滅により、神経保護効果の対象となる網膜神経節細胞の継時的な障害をRT-PCR法、蛍光色素の逆行性染色法、網膜神経節細胞の特異的マーカーであるRBPMSのウェスタンブロッティング法により確認することができた。一方で、標的であるGPNMBのタンパク質を網膜組織内で検出することができなかった。 そのため本年度は、GPNMBのタンパク質発現を検討する予備実験として、マウス軸索挫滅により誘導されるGPNMBが高発現される時期を調べるため、軸索挫滅後のマウス網膜を継時的に摘出し、GPNMBのmRNA発現レベルをRT-PCR法により検証した。その結果、軸索挫滅2日後の網膜内GPNMBは未処置眼に比べて約4倍(p=0.03)、軸索挫滅4日後では約5.5倍(p=0.006)、軸索挫滅7日後では約2倍(p=0.03)の有意な上昇が認められた。軸索挫滅7日後にGPNMB発現レベルが軸索挫滅2日後、軸索挫滅4日後に比較して低いレベルであった理由として、軸索挫滅7日後では網膜神経節細胞が変性、減少することを反映している可能性が示唆された。また、GPNMBのmRNA発現レベルは軸索挫滅4日後にピークであったことから、網膜内GPNMBのタンパク質発現レベルを検討するには軸索挫滅4日後が最適であると考えられるため、今後検討する。また、軸索挫滅4日後は網膜神経節細胞の細胞死が有意に上昇する時期であることが当研究室の津田らの報告から明らかとなっており(Tsuda et al., Exp Eye Res. 2016)、GPNMBがその細胞死を抑制するために代償的に発現している可能性が考えられた。
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