本年度はインフォームドコンセントを得た被験者より得たプラークバイオフィルムを用いて、代謝活性測定法の確立を試みた。 これまでに確立してきた単菌種を用いた代謝活性測定実験に用いたプロトコールを基に、プラークバイオフィルムで測定するにあたって、様々な基質、様々なプラーク量など、諸条件での予備実験を重ね、その改良を試みた。 その結果、相当微量なプラークバイオフィルムでも、その糖やアミノ酸の代謝活性が、リアルタイムに簡便に測定可能であることが示された。また、被験者ごとに、その代謝活性はさまざまであり、基質や採取部位の差によってその代謝活性の強弱にばらつきが見られたことは、個々人のプラークバイオフィルムの細菌構成により、その機能が大きく異なることを示唆すると考えた。また、プラーク採取のタイミングによっても、個人内で変動を示すことが明らかとなり、ヒトプラークを用いた実験では、このような様々な変動因子を考慮することが必要であると考えた。 また、フッ化物や市販のマウスリンスなどの薬剤によるプラーク代謝活性への影響を、同手法を用いて検討した。これらの影響については、個人によりだいぶ異なった。また、経時的にその影響がすぐになくなるものもあれば、長く持続するものも確認できた。これについてはさらなる検討が必要と考えられるが、同一の薬剤でも、個人によってその効能が異なることは、個々人に対するオーダーメイドの予防手法の検討が必要であることを示唆していると考えられた。
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