研究課題/領域番号 |
15H06056
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
森井 真也子 秋田大学, 医学部, 助教 (10375280)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | ω3系脂肪酸 / 短腸症候群 / 肝臓星細胞 / 肝線維化 |
研究実績の概要 |
腸管不全合併肝障害(以下IFALD)は、短腸症候群における致命的合併症である。近年、100%魚油由来の製剤がIFALDに有効であったと報告されている。しかし本剤の作用機序は明らかではない。本剤を使用した症例について、血漿中の88種類の脂肪酸および脂肪酸代謝物をLC/MS/MSによって網羅的に解析した。本剤休薬中および再開後1週間ごとに採血し推移を検討した。投与後の血漿中には遊離脂肪酸とその代謝物52種が検出され、37種は検出限界以下であった。13種の脂肪酸(18-HEPE, Protectin D, 17-HDoHE、他)は、休薬中と比較し本剤投与開始2週間後に増加していた。レゾルビンE前駆物質である18-HEPEはEPA代謝物であり、Protectin D や レゾルビンD前駆物質である17-HDoHEはDHA代謝物である。一方、アラキドン酸代謝物は本剤投与後増加するものだけではなく16-HETEなど減少するものも見られた。製剤を分析した結果、増加した13種は検出されなかったことから、投与された脂肪酸から体内で産生されたものと考えられた。これらの結果について”ω3系脂肪酸製剤の長期単独投与例 森井他 小児外科48(1)”に報告した。脂肪酸は体内で活性代謝物に変換されるため、炎症・代謝性疾患の制御において脂肪酸代謝バランスは重要である。中でも、EPAやDHAの代謝物は、積極的に抗炎症作用を発揮することが知られている。本剤投与後に上昇がみられた13種類の脂肪酸代謝物について、ラットおよびマウス初代培養星細胞、肝細胞に添加し、肝細胞脂肪化や肝臓非実質細胞の産生するサイトカイン、肝線維化の原因となる星細胞の活性化について評価を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床症例より得た血液サンプルの測定が順調に終了し、本剤の作用機序に重要と考えられる物質を特定することができた。本剤の作用機序を明らかにするための動物実験も順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本剤投与後に上昇がみられた13種類の脂肪酸代謝物について、ラットおよびマウス初代培養星細胞、肝細胞に添加し、肝細胞脂肪化や肝臓非実質細胞の産生するサイトカイン、肝線維化の原因となる星細胞の活性化について評価を続ける。 初めに予備的実験において、肝実質細胞はリノール酸添加によって脂肪滴を精製し、その後、低グルコース培地に変更することによって脂肪滴の分解がみられた。これらの現象に13種類の脂肪酸が及ぼす影響を検討する。 続いて、肝非実質細胞を共培養しLPS刺激によるサイトカインの生成を評価した。脂肪酸添加によって炎症性サイトカインの産生に変化がみられている。本年は非実質細胞をさらに星細胞・クッパ―細胞へと単離培養し、この変化の責任細胞を明らかにするとともに星細胞の活性化マーカー(コラーゲン、αSMA、desminなど)について評価する予定である。 さらには、血中EPA高値を示すトランスジェニックマウスに肝線維化を誘導し、生体内における脂肪酸バランスが肝病態に与える影響を明らかにしたい。
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