近年、魚油由来脂肪乳剤の腸管不全合併肝障害(intestinal failure-associated liver disease : 以下IFALD)に対する有効性が報告されている。本剤を投与した新生児発症IFALD症例の脂肪性肝炎・肝線維化の改善を報告した(森井ら、小児外科、2016)。ところで、肝臓の非実質細胞のひとつである星細胞は、脂肪性肝炎など病的条件下で活性化しビタミンA脂質滴を失い、コラーゲンを盛んに合成・分泌するようになるため肝線維化の責任細胞と考えられている。本研究は、ω3系脂肪酸の新たな作用として脂肪性肝炎および、星細胞活性化を抑制することを明らかにすることを目的として行った。 はじめに魚油由来脂肪乳剤使用臨床例の血漿を用い、92種類の脂肪酸およびその代謝産物について液体クロマトグラフィー質量分析計(3連四重極型)を用いて解析し、複数の脂肪酸代謝産物が正常コントロールの約10倍にも増加していることを見出した。さらにこの脂肪酸代謝産物が肝臓脂肪滴に与える影響についてマウス初代培養肝細胞を用いてin vitroに検討し、その結果として、申請者らが特定した脂肪酸代謝産物が、脂肪滴形成には影響を及ぼさないものの、低グルコース培地による脂肪動員刺激時の脂肪滴減少を促進することを見出した。また、ラット培養肝臓星細胞に対し、各種脂肪酸を添加したところ肝細胞脂肪化を抑制する脂肪酸において星細胞においては脂質滴形成を促進することを見出した。肝臓における各種脂肪酸、脂肪酸代謝産物の組成は病的肝線維化の進行に密接に関係することが示唆された(Morii、投稿準備中)。
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