本研究では、近世後期から明治期を中心に東北地方で書写された奥浄瑠璃諸作の表現分析を通して、当該地域の中世文芸の享受とそれを基盤とする創造の諸相を明らかにすることを目的とした。本研究の主な成果としては、従来、奥浄瑠璃研究の中心であった宮城県県域や岩手県県域だけではなく、山形県県域の奥浄瑠璃に関する史資料を見出したこと、その表現分析を通して、東北における中世文学の享受と再創造の一端を明らかにした点があげられる。 また、本研究では、従来の先行文芸との比較を中心とする分析手法をふまえつつ、さらに奥浄瑠璃の研究の新たな可能性として、奥浄瑠璃テクスト間の影響関係を重視した表現分析の方法を提案した。
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