研究課題/領域番号 |
15H06069
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
榎本 哲士 筑波大学, 人間系, 研究員 (60758811)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 数学教育学 / 数学的概念の二面性 / 文字の見方 / 二元一次方程式 / 一次関数 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校数学における方程式の学習指導を改善するために、方程式の見方を「相等関係」から「関数関係」へと変換する場面に焦点を当て、方程式の中の文字の見方を「未知数」から「変数」へと変換する際に生起する困難性を数学的概念の二面性を視点として特定し、生徒の理解を促進させる学習指導の方法を開発することを目的としている。この目的を達成するために、設定した研究課題のうち、本年度は次の考察を行った。
第一に、数学的概念の二面性に関連する文献を精読し、代数学習における方程式及び整式の見方の変容を理論的に検討した。具体的には、数学的概念が持つ二面性(操作・構造)に着目し、代数史の分析を行っているSfard & Linchevski(1994)の研究を、その基盤となるReification理論を考慮しながら解釈し、Sfardらの理論的仮説を特定した。この仮説を踏まえ、数学学習において代数史と同様に、方程式とその中の文字の見方が変容する局面を特定するために、「仮説的学習軌道」(Simon,1995)を用いて、学習指導要領と検定教科書を組織的に分析した。雑誌論文1件、研究発表2件はいずれも、この検討の成果である。この考察の意義は、代数学習の系統性の中に生徒が困難を抱く箇所を特定したことである。数学を教授する教師は、この点を踏まえ学習指導の計画を立てる必要があるからである。
第二に、次年度に実践的考察に向けて、予備調査の計画・設計を行った。具体的には、方程式とその中の文字の見方による困難性を顕在化させる方法を課題を中心に検討した。代数学習の系統性から、整式の見方に焦点を当てる必要性が指摘されたが、具体的な方策までは明らかでない。生徒の困難性をより多面的に捉える方策の解明を目指し、理論的考察と実践的考察とを総合することに、この考察の意義を指摘できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した通り、本年度の研究実施計画におおむね沿って成果を上げられた。第二の課題においては、予備調査の計画・設計を進めたが,実施に至っていない。この点は十分に行えなかった。ただし、次年度の実践的考察において補うことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,次の三つの課題に取り組む。
第一に、予備調査の設計・計画を進める。第二に,現職教員に助言を得ながら、予備調査を実施・分析する。さらに,分析に基づいて教授実験の方法を開発する。第三に、教授実験の設計・計画を進め、実施する。これらの取り組みに関わる一連の研究成果を総合し,方程式の学習指導への示唆を導出する。
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