雑草の除草剤抵抗性について数多くの研究が行われてきたが、除草剤の急速な解毒代謝による抵抗性については、あらゆる雑草種においてその分子メカニズムがほとんど明らかにされていない。解毒代謝型の抵抗性を獲得した場合、複数の除草剤に同時に抵抗性を示すことがあり、大きな脅威となるため、その分子機構の解明は急務となっている。本研究では、米国で発見された複数の除草剤に抵抗性を示すタイヌビエ(多剤抵抗性型タイヌビエ)について、特にアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害型除草剤(ACCase阻害剤)抵抗性機構の解析を行った。 本年度は、多剤抵抗性タイヌビエにおけるアセト乳酸合成酵素阻害型除草剤(ALS阻害剤)抵抗性機構とACCase阻害剤抵抗性機構の異同に着目し、検証を行った。タイヌビエの多剤抵抗性系統と感受性系統の交雑後代F6集団において、ALS阻害剤とACCase阻害剤の反応を評価したところ、いずれの除草剤に対する抵抗性も連鎖関係が認められ、これらの除草剤に対する抵抗性メカニズムは共通すると考えられた。 昨年度の研究において、抵抗性系統で高発現するシトクロムP450遺伝子がイネカルスに複数のACCase阻害型除草剤抵抗性を付与することが明らかになっていたが、本年度は再分化させたイネ植物体における除草剤反応について評価し、カルスと同様に一部のACCase阻害剤について抵抗性を示すこと確認した。 mRNA-Seq解析を進め、一部のACCase阻害剤に対する抵抗性に関与すると考えられるグルタチオン転移酵素(GST)の候補遺伝子が明らかになった。
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