研究課題
本研究の目的は、言語教育の実践における、特に日本人英語学習者の文法的誤りデータ(例えばThere are many book on the desk)を収集し、言語研究の理論、特に生成文法理論に基づいた「誤り分析」を行い、理論の仮説群(例えば、形容詞と名詞の間の数一致のメカニズム)を検証するとともに、日本人英語学習者が誤りを犯しやすい文法項目を明らかにして、効率的な学習を促すための効果的な文法指導を考案し、その実践から得られる新たな文法的誤りデータを理論研究にフィードバックすることで、理論と実践の有機的な「知の循環モデル」を開発することである。平成28年度は、平成27年度に収集した文法的誤りデータを生成文法理論に基づき5種類に分類し(冠詞、前置詞、数一致、主語動詞一致、時制あるいは相)、高習熟度(TOEIC650点程度)と低習熟度(TOEIC450点程度)の日本人英語学習者を被験者として、非文法的な文と対応する文法的な文の容認可能性判断課題を実施した。結果は、1.全体的に、低習熟度群に比べて、高習熟度群の方が非文法的な文に対する容認度が有意に低く、2.興味深いことに、両群において、冠詞の誤りを含む文に対する容認度の方が、前置詞の誤りを含む文に比べて、有意に高いことを示した。冠詞の誤りを含む文は日本人英語学習者には文法的であると容認される傾向があり、この傾向は習熟度が低いほど強いことが示唆された。実験結果は、母語話者によって非文法的であると判断される文を第二言語学習者は文法的であると容認してしまう現象を示しており、この現象を基に、日本人英語学習者が誤りを犯しやすい文法項目を解明できる可能性がある。当該誤りを非文法的と判断できる項目は誤りを犯しにくく(学習しやすく)、文法的と容認してしまう項目は誤りを犯しやすい(学習しにくい)かどうかを検証することが今後の重要な研究課題である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Annual Reports of the Faculty of Education, Gunma University, Cultural Science Series
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IEICE Technical Report
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