本年度はまず一部の大脳皮質の錐体細胞に蛍光タンパク質を発現したThy1-EGFPマウスを用いて深麻酔下でin vivo imaging観察した。そしてNMDA受容体のアンタゴニストを脳表面、或いは腹腔から投与したところ、薬液投与1時間以降に死亡する個体が見られた。このことからアンタゴニストの濃度や麻酔条件、観察条件などを検討する必要があることが明らかとなった。麻酔の影響を排除するため無麻酔下で同アンタゴニストを腹腔投与し、大脳皮質のシナプスにおけるNMDA受容体の量を生化学的に解析するため超遠心機等を用いてシナプトソームを取得した。NMDA受容体のNR2Aサブユニットや他のシナプス構成タンパク質の量をWestern Blottingにより検出しており、現在まだ解析途中であるが、野生型マウスとドレブリン遺伝子改変マウスの脳内のシナプスにおけるNMDA受容体の量への神経活動の影響を解析可能なことが明らかとなった。野生型マウスとドレブリン遺伝子改変マウスの生体脳における役割を明らかにする上で、前述のThy1-EGFPマウスを深麻酔し、2光子励起レーザー顕微鏡下で樹状突起スパインを形態観察した。そして1週間後に再び、同様にスパインの形態観察を行い、全体のスパインに占める安定なスパイン、新たに出現したスパイン、消失したスパインの割合を調べた。ドレブリンの発達期のアイソフォーム変換の起こらないDAKOマウスやドレブリンの全てのアイソフォームを欠損したマウスであるDXKOマウスのヘテロ接合型マウスで解析したところ、これらのマウスでは野生型マウスに比べ、安定なスパインの割合が少なく、新たに出現したり消失したスパインの割合が高い傾向が見られた。このことはドレブリンがスパインの安定性を担っていることを考慮してNMDA受容体の神経活動依存的な局在変化を解析する必要があることを示している。
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