研究課題/領域番号 |
15H06085
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
藤城 貴史 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20740450)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | ヒドロゲナーゼ / 鉄 / 水素 / 生合成 / コファクター |
研究実績の概要 |
[FeFe]-ヒドロゲナーゼは、水素分子を活性化し、電子とプロトンに開裂する金属酵素であり、水素のエネルギーキャリアとしての利用価値から、本酵素の触媒利用に関する研究が活発である。近年、[FeFe]-ヒドロゲナーゼの活性中心である金属コファクターの生合成酵素群の分子科学的解析が進み、[FeFe]-ヒドロゲナーゼがその金属コファクターと複合化し、細胞内で活性体として得られる仕組みが明らかになってきた。この研究背景を踏まえ、本研究では生合成酵素を含む[FeFe]-ヒドロゲナーゼの試験管内での活性体発現系を構築し、人工補因子や金属の添加により、天然の[FeFe]-ヒドロゲナーゼの機能を超えた「高活性型人工ヒドロゲナーゼ酵素触媒」の作成を目指している。本年度は、[FeFe]-ヒドロゲナーゼとその金属コファクター生合成関連遺伝子をそれぞれ大腸菌に導入し、大腸菌で異種生物由来の[FeFe]-ヒドロゲナーゼ発現系を作成した。[FeFe]-ヒドロゲナーゼをコードする遺伝子とその金属コファクター生合成関連遺伝子3種の、合計4種の遺伝子を導入した発現プラスミドをそれぞれ用いて大腸菌を形質転換し、IPTGによりタンパク質発現誘導を行った。その結果、どのタンパク質もそれぞれ可溶性画分に回収可能であり、His-tagを用いたアフニティクロマトグラフィーによりどれも高純度に精製できることをSDS-PAGEにより確認した。この結果から、試験管内で、これら高純度に精製された4種のタンパク質を混ぜて生合成系を構築する準備が整ったといえる。また、4種の[FeFe]-ヒドロゲナーゼと生合成遺伝子を「同時に」大腸菌内で大量発現した場合には、生合成酵素はどれも十分な量の発現量が確認されたが、[FeFe]-ヒドロゲナーゼの発現量は、[FeFe]-ヒドロゲナーゼを単独で発現した場合より、低くなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を開始して半年という短い期間で、[FeFe]-ヒドロゲナーゼとその活性中心金属コファクター生合成タンパク質の、合計4種類のタンパク質発現系を構築し、全て可溶性画分に高純度で回収できる条件を整えることができた。これらの精製は、 His-tagを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、ハイスループットで行うことが可能であり、高活性型の人工ヒドロゲナーゼを作るための人工補因子、添加剤との組み合わせのスクリーニングが効率良く行える実験系の構築ができたといえる。加えて、ハイスループットなHis-tagを用いたこの精製系は、[FeFe]-ヒドロゲナーゼ系の活性測定に必要な嫌気実験に簡単に移行可能であるというメリットもある。以上の観点から、本研究は概ね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、すべての操作を嫌気チャンバー内の嫌気雰囲気下で、これまでに好気条件において確立した手法により[FeFe]-ヒドロゲナーゼとその金属コファクター生合成酵素の精製を行う。嫌気的に得られたアポ型[FeFe]-ヒドロゲナーゼと3種の生合成酵素を、嫌気的に混合し、さらに人工補因子や天然と異なる金属種(Ru、Pt)、人工有機配位子を添加することにより、試験管内人工ヒドロゲナーゼ生合成系の構築を行う。構築した反応系のヒドロゲナーゼ活性の測定を行い、どの添加剤の組み合わせが高ヒドロゲナーゼ活性を示すかを見積もる。実際に高活性が得られた系では、反応系のスケールアップを行い、高活性型人工ヒドロゲナーゼタンパク質を精製、さらにX線結晶構造解析により、なぜ高活性体が得られたかに関する構造-機能相関について検討する。
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