本研究の目的は,性暴力被害が被害者にもたらす影響について,主に社会関係の視点から把握することである。従来,性暴力被害がもたらす影響は,精神や身体の状態といった,個人的な水準で捉えられてきた。しかし,性暴力被害がもたらす影響は,そうした個人の水準にとどまるものではなく,関係性にも及びうる。支援の水準もまた,医療やカウンセリングといった被害者個人を対象にしたものを中心に構想されているが,今後は,被害者の社会関係や環境の調整を含めた支援構想が必要となろう。本研究では,そうした支援構想に向けて,性暴力被害がもたらす社会関係への影響が,どの程度一般化しうる傾向であるのかを,質問紙調査により明らかにする。 27年度は主に,文献調査,質問項目の検討等を行った。上記で述べたような性暴力被害がもたらす影響の様相を把握するにあたり,作業仮説としては,性暴力被害後に被害者と友人や家族とのかかわりは減少しうるか,性暴力被害後にソーシャルサポートへの予期は減ずるか,などを設定した。また,性暴力被害についての実証的研究や,ソーシャルサポートについての先行研究等を参照したうえで,質問項目を検討・作成した。
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