研究課題
散発性大腸癌は分子異常によりいくつかの分子サブタイプに層別化され、各群の重要な発癌分子機構、治療標的となるドライバー分子異常の探索が進められている。しかし家族性大腸ポリポーシス(FAP)はその極めて高い癌発症率にも関わらず、詳細な発癌分子機構が未だ解明されていない。今回我々はFAP14症例から計127個 (腺腫96、癌16、非腫瘍粘膜15) の検体を採取し、定量的メチル化解析、遺伝子変異解析、免疫染色を行って腫瘍の層別化を施行した。散発性大腸腫瘍の鋸歯状経路(鋸歯状腺腫・MSI大腸癌)に認めるBRAF変異・DNA高メチル化の関与はFAP腫瘍には認めず、FAP腫瘍はKRAS変異(+)中メチル化群およびKRAS変異(-)低メチル化群の2群に大別された。散発性大腸癌と同様に、発癌早期に起きるCTNNB1活性化はFAPでも腺腫の段階で完了し、また異常メチル化の蓄積も腺腫の段階で完了していた。中メチル化群に認めるKRAS変異も腺腫の段階で完了していた。それに対しTP53変異は腺腫から癌化する段階で有意に認めた。特筆すべきことに、同じAPC変異を持つ同一家系内においても、あるいは同一症例における異なる結腸部位においても、2つの分子サブタイプによる腺腫形成・発癌を認めた。分子サブタイプ形成はAPC変異と独立して起きることを示唆し、実際異常メチル化の蓄積は高齢・右側結腸と有意に相関した。以上、FAPの発癌には少なくとも2つの分子経路が存在すること、その発癌機構は散発性大腸癌と類似すること、分子サブタイプの形成には胚細胞性変異ではなく環境因子が有意に関与すること、が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Oncotarget
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