研究課題/領域番号 |
15H06105
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齊藤 萌木 東京大学, 大学総合教育研究センター, 特任助教 (60584323)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | アクティブ・ラーニング / 協調学習 / 科学教育 / 学習環境デザイン / ジグソー法 / 概念変化 / 理科教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、科学的概念の理解に対する「知識構成型ジグソー法」の効果の実態を解明し、理科教育におけるアクティブ・ラーニング(AL)活用の指針を示すことである。ALは現在主体性や協調性の育成に資する手法として重要視されているが、理科教育においてより効果的に活用されるには科学的概念の理解に対する効果の実態を検証し、実態に基づく活用指針を示す必要がある。 以上の目的を達成するため、平成27年度は、4名の研究協力者と共に、中学校理科における「知識構成型ジグソー法」の実践例の検討、授業のデザイン、実践を行った。研究協力者との協議の結果、講義式一斉授業での習得が難しい「天体」や「原子」「分子」にかかわる単元に焦点化し、研究を進めた。「知識構成型ジグソー法」を活用した単元をデザインし、いくつかの授業について実践および成果と課題の振り返りを行うことができた。授業のデザインと実践は、メーリングリストおよび対面での議論によって情報を共有しながら進めた。 ここまでの研究成果として、1つの単元でも、導入で「知識構成型ジグソー法」を活用することにより、単元のおおまかなイメージをつかむことができ、その後の主体的な学びに生きる、「知識構成型ジグソー法」で練習問題を解決しながら進めれば、操作的な理解を助ける等、単元デザイン上の位置づけによって効果が異なることが確認できた。これらの研究成果は、ALの授業であっても、教えたい教科内容の本質について授業者が事前に十分掘り下げたうえで、単元レベルの目標を意識したうえで課題を設定することが重要であることを示唆しているといえる。 成果は、「平成27年度新しい学びプロジェクト年次報告会」において報告し、他の実践者、研究者の検討を受けたうえで、授業案・実際に授業で生徒に配布した教材・中心発問に対する3名の生徒の授業前後の解答の変容に基づく振り返り、という3つにまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は「知識構成型ジグソー法」によるこれまでの実践事例の検討(先行研究の検討)に基づく実践授業のデザイン(Phase1)、授業実践及び記録と記録のデータ化(Phase2)を遂行する計画であり、この計画は概ね遂行された。そこで、進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。ただし、研究の具体的な課題については、平成27年度の成果をふまえ、若干の見直しを行った。「知識構成型ジグソー法」は、2段階のグループ活動(エキスパート活動→ジグソー活動)と、全体での交流(クロストーク)を中心に展開される。当初、「『知識構成型ジグソー法』の各段階の活動が、多様な児童生徒の理解の深まりにどう貢献するか」という課題を設定し、それぞれの活動がどのような役割を果たしているかを明らかにすることを予定していた。しかし、27年度の授業実践の振り返りから、各活動は相互に関連し合って全体として、児童生徒の理解の変容を生んでいることが示唆された。そこで、1授業を単位として、知識構成型ジグソー法による学習環境が多様な児童生徒の理解の深まりにどう貢献したかを明らかにすることを、新たな課題として設定した。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記載のとおり、平成27年度の研究成果として、具体的な課題を見直した。しかし、研究の工程そのものは当初の計画のとおり順調に進展しているため、特に変更の必要はないと考えられる。平成28年度には、研究協力者と協議のうえで、児童生徒の理解の深まりをとらえる規準を設定し、規準に即して記録した授業実践データを分析し、「知識構成型ジグソー法」という手法の特徴を活かして個々の児童生徒の科学的概念の理解を深めるための授業デザインのポイントを明らかにしていく。また、そうした成果を実践者向けハンドブックと研究論文の形で公表する準備を進め、教育実践と研究知見の蓄積の双方に貢献したい。
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