本研究の目的は、科学的概念の理解に対する「知識構成型ジグソー法」(KCJ)の効果の実態を解明し、理科教育におけるアクティブラーニング(AL)活用の指針を示すことである。 目的を達成するため、平成28年度は、7名の実践協力者と共に、中学校理科におけるKCJの実践例の検証を行った。27年度の研究をふまえ,講義式一斉授業での習得が難しい「天体」と「イオン」の単元で作成した教材や授業の振り返りを持ち寄り,手法の特徴を活かして個々の児童生徒の科学的概念の理解を深めるための単元デザイン及びそのポイントを明らかにした。 「天体」の単元では,様々な天体の1日/1年の変化を地動説モデルに基づいて説明できることを目指す20時間程度の単元デザインを作成し,KCJ活用のポイントが,時間・空間・距離の3つの視点を「モデル」を媒介に行き来する活動の支援にあることを明らかにすることができた。「イオン」の単元では,「原子の電子配置とその変化に基づいて水溶液の性質や反応について説明できることを目指す25時間程度の単元デザインを作成し,KCJ活用のポイントが,原子構造の「モデル」を媒介に,実験事実を原子の電子配置及びその変化と結びつける活動の支援にあることを明らかにすることができた。 2つの単元における事例研究をとおして,理科教育におけるAL活用の指針として,「モデル」を媒介として知覚可能な現象と目に見えない科学の概念や原理をつなぐ活動の支援に資するという指針を見出すことができた。 成果は、『大学の物理教育』誌においてAL型授業を活用した小中高大連携による科学教育支援に関する論文の形で公表すると共に,実践者向けハンドブックとしてまとめた。研究期間終了後は,これらを元に,学会や研究会で成果の共有・発展を目指す。
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