• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

新しい移民受け入れ国スペインの移民政策と市民社会の反応

研究課題

研究課題/領域番号 15H06110
研究機関東京大学

研究代表者

深澤 晴奈  東京大学, 総合文化研究科, 助教 (90761429)

研究期間 (年度) 2015-08-28 – 2017-03-31
キーワード地域研究 / スペイン / 移民政策
研究実績の概要

本研究では、ヨーロッパ諸国の文脈のなかにおけるスペインの社会統合政策の位置づけを分析し、スペインが移民受け入れ後発国として他諸国の経験を学びながらも独自の社会包摂モデルを打ち出しつつあるのではないかという点を検討し、明らかにすることを目的としている。
スペイン社会には、主に2000年代に、アフリカ、ラテンアメリカ、東欧、アジアといった多様なエスニック集団が短期間のうちに多数流入し、その多くが定住することとなったが、他近隣諸国のように目立って移民排斥運動が大規模化する様子は見られない。経済危機下においてもいわゆる「移民が我々スペイン人の職を奪う」といった論調を支持する勢力は目立って伸びておらず、国政選挙で議席を獲得するにも至っていない。その理由を、これまでの研究成果を踏まえて着想に至った3つの視点、すなわち、①スペイン人自身の出移民の歴史(歴史)、②インフォーマル経済を抱える労働市場(経済)、③市民社会と深く連携した社会統合政策と独自の地方自治制度における取り組み(政策)、を検討することで分析を試みたい。
今年度の調査では、とくに③社会統合政策について、1990年代から2000年代の関連文献・史料収集を中心に研究をおこなった。市民社会のなかでも移民政策決定過程において影響力を有するアクターの一つである労働組合の活動に注目し、労働組合の移民史料センターで収集した史料を元に調査を進めた。加えて、地方自治州の社会統合政策の性格について、また、出身を様々にする移民団体間の連携についても新たな史料を入手することができた。これらの史料を元に、市民社会を最大限に巻き込みつつ社会統合政策が策定されてきた過程と、スペイン人と移民との「双方向からの統合」が進められてきた一端を見出すことができた点は意義を持つ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、主にスペインのマドリード市を拠点として、スペインの移民政策に関する史料調査をおこない、とくに社会統合政策についての史料収集を進めることができた。とりわけ1980年代から1990年代にかけての移民受け入れ初期の社会統合政策について、①移民受け入れ初期における労働組合の活動(全国労組とそのいつくかの地方支部)、及び、②カタルーニャ州をはじめとした地方自治体の初期の活動、については新たな史料が入手できた。ただ、労働組合が移民政策決定過程に関わった際の史料については、スペインの二大労働組合の一つである労働者委員会 (CCOO)の付属機関「移民史料センターの資料を用いて調査をしたものの、存在しないもしくは閲覧状態にないなどとの理由で期待していたほどの情報は得ることができなかった。そのため、今後、本研究における労働組合の位置づけが縮小する可能性もある。いずれにせよ、新たな史料が入手でき、労働組合の位置づけについても当面の検討が可能となったという意味では、おおむね順調に進展していると言って差し支えないだろう。

今後の研究の推進方策

今後は、前年度の研究成果をふまえて、市民社会の諸団体がどのように社会統合政策の政策決定過程に関与してきたかにつき引き続き史料収集をおこなう予定である。今年度は、前年度に行った地方自治州や労働組合の史料センターにおける史料収集と分析をふまえて、市民社会における諸団体間(労働組合、スペイン人による移民保護団体、移民による自助団体など)の連携に関わる史料の入手を試み、体系的に移民政策決定過程に関わる一次史料を収集したい。こうした史料収集とともに、スペイン独自の社会包摂モデルを検討するために、前年度に入手した社会統合政策関連史料から上記の歴史的、経済的、政策の視点に焦点を当てた分析をおこなうことに重点を置く。さらに、行政や市民社会において社会統合政策に関与した人物にインタビュー調査などをおこなうことで、より多面的に考察していきたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] スペインの移民政策とラテンアメリカ出身移民ーその実態と背景としての法的優遇2016

    • 著者名/発表者名
      深澤晴奈
    • 雑誌名

      社会科学

      巻: 46 ページ: 1-28

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 新しい移民流入国としてのスペインー社会統合政策の形成と市民社会の反応2015

    • 著者名/発表者名
      深澤晴奈
    • 雑誌名

      東京大学アメリカ太平洋研究

      巻: 15 ページ: 47-57

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 何故スペインでは外国人排斥運動が大規模化しないのか2015

    • 著者名/発表者名
      深澤晴奈、永田智成
    • 学会等名
      日本政治学会
    • 発表場所
      千葉大学(千葉県千葉市)
    • 年月日
      2015-10-10 – 2015-10-10

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi