1990年代から2000年代にかけて急速に移民受け入れ国へと変貌したスペインでは、多様なエスニック集団が短期間に多数定着したものの、外国人排斥を掲げる勢力は台頭していない。それは、他諸国の経験を学ぶことが可能であった後発性の利益に加えて、市民社会のなかにかつての移民労働者を抱えていることや、独裁後の民主主義と人権を擁護する潮流が深く根付いている歴史的な背景、地域主義の高まりにより国レベルでのアイデンティティを求めにくい状況、移民労働者がスペイン人が就きたがらない非熟練労働に棲み分けされている相互依存の構造などが背景にあることが明らかになった。
|